ずっと読みたかったこの作品、年末にようやく入手して昨日一気に読了しました。
近未来の地球のとある国。
本を所持すること、読むことを禁止されている。
人々は「海の貝」と呼ばれるイヤフォンと、大画面のテレビから流れる動画から
情報を得ることで「幸せだ」と自覚しながら生きている。
道路も一定上のスピードで高速運転することがルールで、とにかく一時も
自分でモノを考えたり判断したりする余裕が与えられていない。
それでも「幸せ」だと思っている。
主人公のモンターグは「焚書官」。
本を所持する家庭についての密告があれば、直ちに現地にでかけ
高温ですべての書籍を焼き尽くす。時にはその持ち主さえも・・・。
自分の仕事に何かの疑問も持つどころか、誇りを持って邁進していた。
しかしそんなモンターグも、隣家の少女・クラリスとの会話や
つい目にしてしまった本の1節から、自分の仕事や生活に疑問を持つことに。
本読みとしては、本を持ってはいけないとか、焼いてしまえ!なんていう国では
絶対に生きたくありませんが、多分ここでの本はある意味象徴なのでは
ないかという気がしました。
携帯・スマホ・タブレットを片手に、目の前にいる人間そっちのけの
コミニュケーションがメインとなりつつある現代とかなり一致するのは
確かですが、焚書は秦の始皇帝が最初だそうですから、異質なものを
排除する典型的な方法なのでしょう。
だから本を読むことを礼賛する、読書の勧め・・・ということがメインでは
ないように思います。
本を読むことの魅力は語り尽くせないのは確かですが、
でも本読みの人間が人格的に優れているわけでもないし
本そのものだって玉石混合なのは確かですから。
ディストピア小説を読んだあとはなんとも暗澹たる気持ちになります。
それでもこの作品は、希望も感じることができるけれど。
多くの未来小説に描かれる幸福な人たちは大抵思考を放棄することにより
その幸福が約束されているのです。
それは徐々に洗脳されていくものなのかしら?
でも絶対的な幸福なんてまずないのだから、やはり革命という争いも生まれますよね。
怖いですねえ・・・本当に怖い。
でも久々のブラッドベリのこの世界、この文章、十二分に堪能しました。
華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)/早川書房

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はるかむか~し、テレビの名画劇場で見たことがある。
具合が悪かった日で、タイトルが有名だからみたものの炎の印象しかない。
ブラッドベリが原作でだったことも、監督がトリュフォーだったことも
ずっとあとになって知ったこと。残念だ~!もう一度見てみたい。
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