中篇を含めた合計7篇からなる短編集です。
以前読んだ「百年の孤独」を凝縮したような、そんな感じのお話で、
もしかしたらこれは習作だったのかもしれない。
赤道に近いコロンビアの「海」とあの「熱さ(暑さではない)」あってこそ
生まれた文学という感じがします。(コロンビアは行ったことないけど)
多分、マルケスが寒い地域や季節も十分存在するアルゼンチンや
チリの出身だったらこういう方向には行かなかったのではないかと思う。
同じような暑さがあろうとも、そして十把一絡げにラテンアメリカと呼ぼうとも、
やはりそれぞれの国は全く異なります。
スペインに征服され表面的にクリスチャンになっても、昔ながらの土着の
迷信、信仰が優先される人々。
ものすごく厚かましいのにどこか繊細だったり、ムードに酔ってついつい現実の
数倍にもものごとを膨らませて語ってしまうような、ラテン系の皆様の特徴が
よくよく出ていると思えるシーンが満載。
相変わらず、腐った死体だとか、殺人だとか、得体の知れないものが浮遊したりとか
グロテスクな場面が多いのに、それすらもなぜか笑ってしまうようなおかしみに
感じられたり、そして時にはそれが美しいとすら感じてしまうこの不思議。
ますますクセになりそうです。
収録作品のそれぞれのタイトルは下記のとおり。
どれもほぼ原題の直訳ですが、思わず読みたくなるタイトルばかりです。
表題作はもちろんのこと「大きな翼の・・・」と「この世で一番美しい・・・」が
特に良かった。
「大きな翼のある、ひどく年取った男」
UN SENOR MUY VIEJO CON UNAS ALAS ENORMES.
「失われた時の海」
EL MAR DEL TIEMPO PERDIDO.
「この世でいちばん美しい水死人」
EL AHOGADO MAS HERMOSO DEL MUNDO.
「愛の彼方の変わることなき死」
MUERTE CONSTANTE MAS ALLA DEL AMOR.
「幽霊船の最後の航海」
EL ULTIMO VIAJE DEL BUQUE FANTASMA.
「奇跡の行商人、善人のブラカマン」
BLACAMAN EL BUENO VENDEDOR DE MILAGROS.
「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」
LA INCREIBLE Y TRISTE HISTORIA DE LA CANDIDA
Y DE SU ABUELA DESALMADA.
エレンディラ (ちくま文庫)/ガブリエル ガルシア・マルケス

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