「深夜プラス1」   ギャビン・ライアル | MARIA MANIATICA

MARIA MANIATICA

ASI ES LA VIDA.

1965年に書かれたイギリスのハードボイルドな冒険小説。

第2次世界大戦中はレジスタンスとして活動し、現在(1960年代)は
エージェントとして生活するカントンことルイス・ケイン。
かつての同志であり、今は弁護士となっているメルランから依頼を受け、
富豪のマガンハルトをフランスからリヒテンシュタインまで
決められた時間(24時1分)までに送り届ける任務につく。

相棒としてよこされたのは、アル中のボディ・ガード、ハーヴェイ・ロヴェル。
腕前はヨーロッパでは第3位の腕を誇りながらも、アルコール依存癖を持つ彼が
相当に印象的。脇役にしておくのは惜しいくらい魅力溢れる。

古いコードネームを使って電話でカントンがメルランに呼び出される
冒頭のシーンからもう、お話の世界に引き込まれてしまいました。

任務の内容からは殺意が喚起されるはずはないのに、次々と襲ってくる刺客たち。
理由を理解できぬまま、任務を遂行するためにカントンとハーヴェイは
カントンのレジスタンス時代の仲間を頼りつつ、ベストを尽くして進みます。

時代的なものなのか、ヨーロッパという土地柄なのか、緊迫感の中にも
どことなく暢気な雰囲気が漂うのも面白い。
また、ヨーロッパ車や銃などの描写も精緻で、マニアでなくても
この拘りはうれしい。
もちろん、そんな物理的な描写だけでなく、登場人物それぞれの
過去と現在の自分との闘い、信条なども丁寧に描かれています。
この美学がいいんだよね~♪う~ん、たまらん!

最後にカントンがハーヴェイに行った仕打ち・・・これがまた
いいんだな~。
どうかハーヴェイに幸運をもたらしますように、と祈らずには
いられない。

あとがきで作家の田中光二さんが書いていらしたように
優れたエンターティンメント性をもつ、これもまた度重なる
再読にも耐えうる名作だと思いました。

翻訳は、ロバートBパーカー作品でおなじみ菊池光さん。
原文で読んでいないので、原作の持ち味は残念ながらわかりませんが
パーカー作品の翻訳と同様やや軽めな印象の文章です。
いつもながら読みやすいのですが、もう少し重厚感があったら
また違う印象の作品になったかなとは思います。
冒頭からしばらくの間は主語が省略されていることが多く
わかりづらい部分もありました。

とはいえ、最初から最後までわくわくしながら楽しく読みました。
これからも確実に読み返すと思う。

ヨーロッパの香り漂うハードボイルド・・・かなり好きかも。


深夜プラス1 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 18‐1))/ギャビン・ライアル

¥882
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表紙がたびたび変わっているようですが、私の読んだのはこれ。
期間限定カバーだそう。
「ヒーローみたいに生きよう」というコピーが・・・これは止めて~。

$MARIA MANIATICA


甲斐さんの好きな100冊の本には入っていない作品だけど・・・。
(3・26 今日になって動画が削除されていることに気づき、差し替えました。)