「KAGEROU」    齋藤 智裕 | MARIA MANIATICA

MARIA MANIATICA

ASI ES LA VIDA.

仮面ライダー・カブトの水嶋ヒロくんの作家デビュー作品で
第5回ポプラ社小説賞受賞作品です。

ご本人自身がかなり有名なだけに、毀誉褒貶の差が
激しい作品だろうと思います。
ヒロくんファンの長男が借りてきていたので読んでみました。

毀誉褒貶のうち、酷評をずいぶん目にしていたのですが
私自身はそれほど悪くはないと思いましたし、実際
中盤までは展開が予想できず、星新一のショートショートを
読むときのような気分で、結構面白く読みました。
カテゴリーは、ファンタジーになるのかな?

違和感があるのは、
1)41歳を目前とした主人公の年齢が感じられないということ。
この年齢をあえて描くにはかなり薄っぺらい気がしました。
それに設定がヒロ君と同世代であっても何も違和感ないと
思えるのが正直なところ。
とはいえ、40歳代がきっちり敬語使えるわけでもないし、
案外こんなものという気もします。
年齢とその人の質はまったく別のベクトルを描くことは多いです。

ただオヤジギャク・駄洒落の数々は・・・彼が帰国子女だから
あえてなのか?
それとも彼(主人公)の年齢を表すためのものなのか・・・?

2)40歳の主人公は言わずもがなですが、組織はかなり
教育された機関であるよう・・・なのに、使われている
敬語の系統が全くなっていない。
大人のきちんとした世界を描くにはこのあたり
きっちりしないと、やはり薄い感じはしますね。

芥川賞受賞作品をはじめとして、このところ賞受賞作品は
決して面白いと思えるものが多くはありませんし、
イマイチ深みに書ける本は結構ありますよね
これがライトノベルというものなのでしょうか?

以前、コメントで「売るための賞」というご意見を頂きましたが
そういうことなのかもしれませんね。
活字離れも著しい時代、出版社の台所事情もあることでしょう。
2000万円の賞金で、売り上げは・・・なんてつい下世話なことを
考えてしまいますが・・・。

海外暮らしが長く、日本語が不自由(だった?)という作者ですが、
生と死、臓器移植などなかなか興味深いテーマを選んでいますし、
私は結構、主人公の台詞や心情を考えてしまいましたね。

それが単にテーマによるものなのか(つまり誰が書いても
同じことを感じるのか?)、彼の文章があったからこそなのかは
わかりませんが・・・これらを描くにはまだまだ力不測は否めません。
が、逆にそういった経験が活かせたら、同世代の日本人が
持つことのできないてない視線で書ける可能性もあるかも。

将来的に期待できそう、ということで本来贈られる賞だと思うので
どなたも次回作に期待したいところですね。
・・・と、「おばあちゃんが言っていた・・・」


KAGEROU/齋藤 智裕

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