「1973年のピンボール」    村上春樹 | MARIA MANIATICA

MARIA MANIATICA

ASI ES LA VIDA.

なぜだか途中までてこずりましたが、後半は一気に読み進むことができました。
でもとにかく双子が気になって、お話全般、特に前半が把握しきれていないのです。
だから今日はこの本についてだけではなく、ちょっと思ったことを、とりとめなく
書いてみます。

このところ私の読むものが双子ばかりと、先日書いたばかりだけど、ここにも双子。
しかも、その双子は名を名乗らない。好きな名前で呼んでくれ、という。
右・左、あるいはTシャツに書いてある番号208、209・・・。
人が生まれてきたら、それから知り合ったら、まず関心を抱くもののひとつは
「その人の名前」であるはずなのに、誰も執着していないことに
「ひどく(春樹っぽい?)」驚いた。

この名前というアイデンティティを持たないふたりを、なぜか兄のように、
父のように「僕」は面倒を見ているんですよね・・・・ならば
名前をつければいいのに・・・面白いな。
そして出会いが唐突であったように、別れもあっさりと唐突にやってくる。

その前に、断片的に何かとの別れも描かれていたし、双子と出会ってからは
壊れた配電盤との別れ、ピンボールマシーンとの別れもあった。
僕自身が何かから脱皮しているのかも、なんて思いましたがどうかな。
逃避とか喪失感というよりも、もう少し前向きなものを感じたけど、変かしら?

実は、一番最近読んだエッセイ「村上朝日堂 はいほ~!」の中に、
夢は双子の女の子を連れてパーティに行くことと村上氏が書いているんですね。
(ほかにもピンボールマシーンのことが書いてある)
80年に、この「1973年のピンボール」、そして83年に「はいほ~♪」が
書かれているので時差は3年になります。

でね、とにかくこの双子についてが面白いというか、この「1973年・・・・」の
中での双子の扱われ方の事情が垣間見えるような気がするのです。
村上氏としては、双子とそれぞれと同じだけの距離感を保つことが重要らしい。
どちらかが特別な存在になってしまうこと、たとえば交互にデートするとかでは、
意味がないという。
すべては書けませんが、これおそろしく興味深いよ・・・。

それからやはり、他者へのコミットメントの度合いということでしょうか。
一つ前のブログでちょっと触れた感受性にもかかわってくるかと思いますが
他人との関係のとり方が面白いな、と。

双子に名前をつけないことなどから、当初は冷たいというか、他人に
興味を持たないのかな、とも思ったけれど、多分それは感受性ゆえ。
冷たいということとはちょっと違いますよね。
実は私がそうなんだけど、他人のことを自分のことのように背負い込んでしまうことがある。
それってかなりヘビーなんですよね。で、当の本人はすでに別のステージに行ってしまって
いたりするのに、いつまでもそれを我がことのようにくよくよしたりダメージ受けたりして。
それを避けるために、ある程度時間が過ぎるまでは一定の距離感を置きたいと思うんだけど
そんなことかな、と。
名前で呼ばないのも、特別な存在にしてしまわないため?
特別なものを失うのが辛いから?
・・・そんな風に思いましたが、どうでしょう。

ああ、なんだかいつも以上にとりとめなく、しかも独りよがりだけど、
今日はなんとなくそんな気分なのさ・・・。

ハードボイルド、恋愛小説、歴史もの、ファンタジー・・・それぞれの
分野を読む前には、そういう作品だと認識しながら読んでいるはずなのに、
なぜか私は村上春樹の小説に関しては、、わかりやすいエッセイの印象が強すぎて、
普通の人が普通に理解できる小説が書かれているはずと、漠然と、でも勝手に
思い込んでいたように思う。変ですね~。なんども躓いているのに懲りてない。

書かれている文章を真に受けていた、というのが一番正解。
そして、こんなことあるはずないじゃないかと思ったりしちゃってた。
何冊読んでも、その思い込みの違いに気がついていなかったし、理解できないからと
アプローチを変えてみることもしなかった・・・まあ、投げ出さなかったことだけは救いか。
応用力がないというか、なんと言うか・・・とにかく、村上春樹の小説のタイプが
全然わかっていないってことだったんですね。

今だってわかったわけじゃないけど、この作品の中には文体ひとつとっても
いろいろな試みがありますよね。
で、ある章から突然ミステリータッチに変わったように思えたのですが、、
それを感じた瞬間からは、なぜかすらすら~と読めたんですね。
(あ、これって小説なんだ・・・創作なんだ・・・)と、まるでおバカさん
みたいですが、今回はじめてそう認識しだのでした。
多分、次からはこんな感じで読めるようになると思う。
次の「羊をめぐる冒険」に行く前に、これはぜひ再読しておこうと思います。

ところで、実はこの本を読むのは2度目だったみたい。
読み始めたら、なんだか知ってるぞ・・・という気分になり、
そしてやはり本棚の奥からまったく同じ本がもう1冊出てきた。
だけど、読んだか読まないかのあいまいな印象しかないというか
多分、読みながら理解不能の部へと、すでに弾いていたんだろうと思います。

あ~、ほんとに取り留めないなあ・・・。
もしも・・・もしも、ここまで読んでくださった方がいらしたら
心よりお礼申し上げます。おつきあいありがとうございました。

というわけで、これは今年度中に再読をしたいと思います。


1973年のピンボール (講談社文庫)/村上 春樹

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作品中でこの曲を口笛で吹く女の子が・・・。