感想に入る前に、お話の最後あたりで登場人物のひとりが
「文学は人をからかうための最良のおもちゃである」と
語っていることを先に書いておきます。
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ある一族の100年の盛衰記とでもいえるのかな・・・いや、
一族というよりもマコンドという村の盛衰記になるのかな。
そんな風に主役というのもよくわからない。
何しろ数代にわたるお話でしかも祖父から父、そしてさらに
その子供へ・・・というように同じ名前を譲られているから、
何度も何人も同名の別人が出てきて区別がつかなくなってしまう。
アウレリャーノなんて異母兄弟17人が同じ名前だったりするのです。
死んだと思っていたのに、ひっそり家の片隅で何十年も生きていたり、
確かに死んだのに生き返ってきたり、霊になって現れてみたり・・・
存在は強烈なのに、なぜか全体がゆらりゆら~りとした感じで、
触ったらサーッと消えてしまいそうな印象です。
そんな中、女性たちは現実感がありたくましい。
結局真ん中にしっかりと根をはっているのが、ウルスラなんだろうなあ。
もう一人が、私の好きなピラル・テルネラで、タイプの異なる二人が
100年以上にわたりこの家を支えてきた。
彼女たちをはじめ、出てくる女性たちは個性はいろいろだけど、
で~んと構えて動じることない、強く、愛情深く、そしてちょっと身勝手。
信心深いのにしていることは??なことだったり、信心が過剰すぎたり。
でも彼女らの情熱や信念は、いかにものラテン女だし、
こういうところが私の好きなラテン気質なのですね。
出てくる男どもはほとんどが、彼女らがいなくては多分進むことも
戻ることもできないマッチョなマザコンって感じで、なかなかいいです。
とにかく、子供のように自分の好きなことにばかり熱中していて女泣かせ。
でも外では、時に国中に名前を轟かすアナーキストやコロネル(将軍)と
なっていたり。魅力はあります。
読みながら浮かんでくるのは、まずアントニオ・バンデラスが出ていた
「デスペラード」という映画の町並み。
あれが私にとってのマコンドの街のイメージのベースとなりました。
ついでにアウレリャーノも私の中ではあのバンデラス顔になってしまった。
そこに私なりに見てきたラテンアメリカの映像や色彩が加わって
私なりのマコンドのイメージができた。
その熱気で息もできなくなりそうだ。
人間の心情を細かに説明することも無く、しかも出て来るエピソードは
かなりグロテスクだと思う。
殺人、戦争、毒虫、害獣、性描写、近親相姦、排泄・・・などなど、
私の苦手なものが満載なんだけど、ちーとも嫌なイメージでなかったのは、
ひとえにマルケスの技ゆえということなのでしょうか。
人なんてバンバン殺されているし、書き方次第ではかなり
ポルノチックになりそうな、きわどい内容も多分に含んでいるのに
全く嫌悪感を持たずに読めました。
なんとなくね~「古事記」を読んでいるような感覚で、
神聖というには大げさなんだけど、原始的というか、それこそ本能という
感じで全く不潔感がないんですよね。
蜃気楼を見ているような、といえば良いのか・・・膨大なエピソードが
あとからあとから怒涛のごとく押し寄せてくる。
現実的なものから、ファンタジックなものから、いろいろ。
そして隣り合うエピソード同士は、全く関連性がなかったりする。
しかもそれが特に改行するでもなく、唐突に続いていたりするのです。
めちゃくちゃ面白いところもあれば、ボーっと読んでいて(あれ?
今読んでいたこの数ページには何が書いてあったんだっけ?)と、
我に返って思い返してみたりするようなことも何度もありました。
最後の章を読んで、ようやくなるほど~とはなんとなく思ったけど
(でもよくわかっていない)、当然のことながら、そこだけを
読んでもわかるはずもない。
エピソード一つ一つ覚えていなくても、やはり初めから読んでこないと
この最後が楽しめないような、なんとも不可思議な手法を持つ作品でした。
やはり文学者マルケスに、読者はからかわれているのかしらね。
全体として「ラテン~!!!」などと私がいうのは僭越ですが、
その熱気はひしひしと伝わってくる。
パーティに訪れる、名も知らぬ人々の行動やらなにやら、
とにかく全体がラティーノ!なのです。
「どうぞ~」といわれたら、遠慮なんか一切しないで骨の髄まで食い尽くす。
なんというのかな~、あの空気が日常にあるってこと自体がやはり
そもそも非日常という気がしますね。
その中にいる人にとってはもちろんそれが日常なんだけど。
ラテンアメリカの人たちが読んだとしても「ファンタジーっぽい」
「現実離れしている」なんて思う人はほとんどいないような気がするな。
暑い夏の日にエアコンつけずに読んだら、マコンドにいる気分で
読めるかもしれません。
正直、面白いのか、面白くないのか・・・ただただ長く、とりとめなく見える
果てしないお話です。
決して大長編ではないけれど、読みきるには気力・体力が必要だと思います。
私も再チャレンジでようやく読了しましたが、
読んでよかったと思います。
原題は「Cien anos de soledad」で、直訳すると実は「孤独の百年」。
でもこれは圧倒的に日本語訳が勝ちですね・・・「百年の孤独」・・・
このタイトルだけで読みたいって思わせますよね。
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おそらくこの小説からきたんだろうと思うけど・・・幻の銘酒だそうですね。
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