「チップス先生 さようなら」 | MARIA MANIATICA

MARIA MANIATICA

ASI ES LA VIDA.

読みかけの「限りなく透明に近いブルー」半分くらいまで進みましたが、
どうしてもお話が頭に入ってこないみたい。
なんだか記号を追っているみたいになってしまったのでとりあえず
今回は諦めて、ひとまずペンディングにしました。

で、代わりに読んだのがこの「チップス先生 さようなら」です。
必読図書のひとつだと思い、買ったのは多分20数年前でしたが、
先送りにしているうちに今日まで来てしまいました。
今まで読まずにいたことは勿体なかったな、とこれについても思います。

イギリスの全寮制パブリックスクールに人生の半分をささげたチップス先生の回想です。
仕事を愛し、学校を愛し、生徒を愛し、保守的に、自分の分をわきまえた
いかにもイギリス紳士という姿が描かれています。

48歳にして、20歳以上年の離れた娘のような女性と恋に落ちて結婚。
進歩的で思いやりに溢れた彼女は、チップスの人生に大きな影響を
与えることになりますが、不幸にもわずか1年ほどの結婚生活ののち
身重の妻は亡くなってしまいます。
このあたり、淡々と描かれているものの涙なくしては読めません。

大きな出来事はそのくらいで、あとはごく平凡な、けれども伝統、信仰、誇り、
文化・・・そう言った守るべき対象を持っていて、日々を大事に生きている
生活スタイルはとても好きだし、感銘を受けました。

紳士たれと育てられてきたイギリス人気質が美しい詩のような文章で
つづられており、素敵な余韻が残ります。

「チップス先生 さようなら」は、結婚前日に彼と会った亡き妻が
別れ際に言った言葉でしたが、亡くなる前日に家を訪ねてきた学生が
やはり同じ言葉を残して彼の家を後にします。
なんとなく暗示的な雰囲気がありました。

もしかしたら、萩尾作品に出てくる全寮制の学校が刷り込まれているのかもしれませんが
イギリスとかドイツとか、生真面目で伝統を重んじている国のお話は素敵だと思います。
体質的には大雑把なラテン系なので、ないものねだりなのかな。
ただ、やはり古典のシェイクスピアの素養は必要みたい。
これは何度も挑戦しては挫折してきたけど、イギリス文学(まさかE-ブンガクとか?)は
アーチャー、シリトー、グリーンや、神話など素敵なものがたくさんあるので
今後のために、一度は読破したいと思います・・・・弱気・・・。


私のは昭和62年発行で、当時の定価は180円でした。

チップス先生さようなら (新潮文庫)/ヒルトン

¥420
Amazon.co.jp


「アラビアのロレンス」でおなじみのピーター・オトゥールさんがチップス先生役。