お寺を後にして来た道をそのまま戻り、先程下車した最寄駅の出口の前を更に通過して暫く歩いて行くと、大きな交差点の角地に〝あるお店〟が見えてきました。
バブル時代に〝待ち合わせと言えば〟でお馴染みの、鮮やかなピンクと白のストライプで有名なお店です。
そのお店は今も営業を続けていて、当時のド派手な外観から落ちついた雰囲気に変わっていました。
この街には明さんは高校時代、私は20代の終わりにしばしば通っていましたが、二人とも久し振りにこの場所を訪れて、街の変わりように驚いていました。
「明さん、ここに来て」
明さんが私の所に駆け寄りました。
「昔ね、私が28か29の頃に、一緒に遊びに来ていた職場の同僚が〝ここからみる夜のタワーが一番好きなんだ〟と言っていたのを思い出した」
と私が話すと、
「ふーん。俺の友達でこの店でバイトをしていた子がいたなぁ。この店(=角地にあるお店)まだやっていたんだね」
そのまま大通りをタワーの方向に歩いていくと、右手路地の奥に大きなギターが見えました。
「あっ、懐かしい!俺昔、阿部と来たよ。この店こんな場所にあったんだ」
阿部さんは明さんの高校時代からの友達です。
更に大通りを進んで行くと右手に間も無く解体予定の13階建てのビルがありました。
階段を上って中に入ると、店舗は殆ど入っていない状態で、ビルの中は閑散としていました。
「俺このビルの上階のディスコに良く通っていたよ」
「いつ頃の話?」
「高校時代」
「ふーん、そうなんだ」
「昔は賑わっていたけれど、今は全然人が居ないね」
「そうだね、建物自体も相当古い感じだし、また新しいビルが出来るのかな?」
ビルの外に出ると、今度は道路を渡って反対側の道沿いを歩き始めました。
「この辺りにあったと思うんだけど」
明さんはスピードを上げてどんどん先に歩いて行きます。
私はその後を付いて行きました。
すると、お墓のある広い場所に辿り着きました。
「あった!この辺りじゃないかと思ったけれどやっぱりここだ!懐かしいなぁ」
「ここはどんな場所なの?」
「俺が高校時代にバイク仲間と集まった場所。ここにこうやってバイクを停めて」
明さんは身振り手振りでその当時のことを話し始めました。
「この場所は高校時代から全然変わっていない」
私と明さんはその場を後にして今来た道を戻り大通りに出て、今度は交差点の方向に向かって歩き始めました。