前日も私と明さんは常宿で体を重ねて、翌朝9時に再び常宿の最寄駅で待ち合わせをしました。

約束の10分前に着くと既に明さんが待っていました。

明さんは私が持参した主人のコートを着ています。

渡航先にコートを持っていくのは荷物になるので、主人のコートを代わりに着てもらうことにしました。

サイズは丁度良い感じでした。

「おはようございます。予定より少し早いですが行きましょうか?」

私と明さんは電車に乗ってお墓のある最寄駅に向かいました。
 

 



駅に着いてそこから数分歩いた所にお墓のあるお寺がありました。

お寺の境内を暫く歩いて事務所のある建物に入りました。

事務所に居たお坊さんに声をかけて、お墓にお供えするお線香を買いました。

お線香代は私が支払いました。

お坊さんが土間の上でお線香の束に火を付けると、その束を小さな手提げ籠の上に乗せました。

明さんはそれを手に取ると、事務所の入口とは反対側の障子扉を開けて外に出ました。

私も後を付いて外に出ると、古い小さなお墓が並んでいました。

その中を暫く歩いて突き当たりにある場所に明さんのご先祖のお墓がありました。
 

 

 

 

早速お線香を手向けて二人で手を合わせました。
 

「私達あのお坊さんに夫婦って思われたかな?」

「それは夫婦って思ったでしょ」

「でも私ずっと明さんに敬語で話しかけていたから不審に思われたりしなかったかなと思って」

「大丈夫でしょ」

「この赤い文字は何?」

側にあった赤い文字で彫られたお墓を見て尋ねると、

「この人はまだ生きている人で亡くなったら赤色が抜かれるんだよ」

と明さんが教えてくれました。
 

 

 


私と明さんが明さんのご先祖が眠るお墓の前で今一緒に過ごしている。

とても不思議な感覚でした。

でももう二人で訪れることは無いだろうとその時思いました。

 

 

 

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