その2では砲座周辺を見て行きます。

 

観測所の前面には交通壕が南東に向けて下っています。

 

交通壕の脇で掩体Aを見つけました。

 

内側に石積みが施されてしっかり造られています。

 

内壁には物置棚のような凹みがいくつか設けられています。

 

掩体Aの後方には交通壕があり、下ると第2砲座に行き着きます。

 

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最初の交通壕に戻って南東に下ると“B”の場所に出ます。

ここにはコンクリートの瓦礫が数多く転がっています。何かしらのコンクリート構造物があったように感じますが、破壊が激しいためよく分かりません。

 

瓦礫が重なっている所もあります。

 

石積みに挟まれた通路の上に方形コンクリートが乗っていますが、破壊された瓦礫がたまたま乗っかっただけかも。

 

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方形コンクリートの上から交通壕の三叉路を見下ろしています。

 

掩体Bへの交通壕を進みます。

 

掩体Bです。

 

先ほどの掩体Aとほぼ同サイズで、内壁に凹みも確認できます。なお床面には石材が台座のように置かれています。

 

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三叉路に戻って第2砲座方面に向かいます。

 

第2砲座西側の“D”の場所に到着しました。

 

出てきた所を振り返るとこんな感じ。当時はきれいに積石されていたかと。

 

砲座は後回しにして西側に進むと掘り込み窪地Eがあります。

 

窪地Eは右カーブを取って掘り込まれていますが、窪地の先に石積みがあり...。

 

石積みを上がるとFの掩体跡があります。

 

Fを東に進んで振り返っています。左手にDで見た石壁が写っています。ちょうどぐるっと一周回って来た感じですね。

 

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歩いてきた所に赤線を引いてみました。

 

第2砲座です。四五式十五糎加農改造固定式1門を据えた砲座です。

 

荒れていて破壊の痕もありますが、各地に残る十五糎加農砲座と同型です。コンクリート製円形胸墻、胸墻に2か所の階段、砲床に火砲据付の凹みが確認できます。

 

四五式十五糎加農改造固定式はこちら。 (「日本陸軍の火砲 要塞砲」より引用)

 

火砲据付部。沈定ボルトの縦穴跡が確認できます。

 

砲座を南側から見ていますが、気になるのは矢印の箇所です。

 

砲座内部にコンクリート胸墻にくっつく形で積石されています。

 

胸墻より高い石垣で火砲の射撃方向に設けられています。

 

ヒキで見ています。

左側は崩れていますが、おそらく黄線で石積みされていたように思います。

 

このような砲座内に石垣が築かれているのはココだけですが、なぜ積まれたのでしょうか?

石垣があると射撃ができないどころか火砲を据付することも不可能ですので、積石された時点で火砲は取り外されていたのではないかと思われます。

 

大東亜戦争末期の昭和20年(1945)には日本各地で本土決戦陣地の構築に明け暮れました。要塞砲台の火砲は洞窟に移設するように命令が下りましたが、おそらく竹崎砲台においても洞窟掘削と火砲取り外し作業が行われたと推察されます。“洞窟砲台”が完成していたかは不明ですが、砲座内の石垣は火砲取り外し後に決戦陣地の一つとして築かれたと考えられます。

 

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第2砲座前方の東側を少し下ると、軍跡ではお馴染みの大日本麦酒のビール瓶が転がっています。

 

昭和12年7月製造かな?

 

さらに下るとコンクリート杭が埋設されています。砲座周辺を囲むように複数確認しましたので、侵入防止の用途があったと思われます。

 

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第2砲座の南側に深い掘り込み窪地Gがあります。

 

下りて振り返って見ています。

 

掘った部分の岩壁を見ると相当深く掘られている感じがします。

 

おそらくこれは地下壕の崩落跡かと思われます。崩落は射撃方向の海面に向けて崩れているので、もしかしたら火砲を移設した洞窟砲台だったかもしれません。

 

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窪地Gから南に進むと第1砲座がありますが大ヤブに埋もれています。

 

内部に降りてみると、コンクリート胸墻に破壊の痕が残っています。

 

第1砲座の階段部分。形状は第2と同じです。

 

第1砲座には第2砲座のような石垣が設けられていませんでした。もしかしたら、「洞窟掘削→火砲取り外し→砲座内に石垣設置」と言う作業を第2砲座と同様に第1砲座でも行う予定だったが、作業前に終戦になった・・・とも考えられます。

 

以上で砲座周辺の紹介を終わります。

次回は砲台から下って海岸の施設跡を見に行きます。

 

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[参考文献]

「現代本邦築城史」第二部 第二巻 對馬要塞築城史(国立国会図書館デジタルコレクション所蔵)

「日本築城史-近代の沿岸築城と要塞」(浄法寺朝美著、原書房)

「対馬砲台あるき放題~対馬要塞まるわかりガイドブック」(対馬観光物産協会)

「対馬要塞物語2」(対馬要塞物語編集委員会)

「対馬要塞竹崎砲台備砲工事竣功図書提出の件」(Ref No.C01004455500 国立公文書館アジア歴史資料センター)

「国土地理院地図(電子国土web)」を加工して使用