その2では地下発電所から見ていきます。

 

 

発電所は地下に造られています。

 

内壁には迷彩が施されていますが、その1で紹介した迷彩建物とは違ってこちらは鱗状になっていません。

 

間取りを描いてみました。

 

右手に物置のような凹みがあります。

 

左手に開口部があるので入ってみると...。

 

デカくて深い貯水槽が現れました。

 

貯水槽の内壁に鉄製の梯子が残っています。

 

左側に土管と奥の壁に丸い穴があります。

 

丸い穴の地表露出部分はおそらくコレ。こんなところにも迷彩が施されており芸が細かいです。

 

奥から開口部を見ています。

 

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貯水槽から退出して中に入っていきます。

 

右手の部屋に入ります。

 

内部は何もありません。間取図では部品庫としましたが油脂置場だったかも。

 

次は左手の部屋へ。

 

こちらは発電機室です。

 

床面には発電機の設置台座冷却水を流す溝があります。

 

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発電所を出て右側を見ると横穴壕があります。

 

そんなに大きな穴ではありません。

 

発電所入口の南側の道沿いにコンクリート構造物が露出しています。おそらく貯水槽があった部屋の外壁かと。

 

舗装路から分岐する道筋があるので行ってみます。

 

方形のコンクリート桝。その下には先ほど掲載した換気孔の突出部が見えます。

 

道を上がると平坦地があります。建物基礎は確認できませんが、兵舎があったのではないかと推測しています。

 

平坦地北側の斜面に貯水槽があります。

 

水槽の外壁に迷彩の痕が確認できます。

 

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発電所を後にして灯台を目指して歩いて行きますが、道すがらケーブルを埋設したことを示す標柱が残っています。

 

山道を抜けると絶景...と言うか牧草地です。

 

灯台に向かいます。

 

灯台手前に石垣があります。

 

奥に行ってみると...。

 

掩燈所が現れました(・∀・)

 

掩燈所とは移動式射光機(探照灯)の格納庫です。射光機を使用する時にはココから引き出し、誘導路を転がして照明座に配置しました。各要塞の電燈所には同様の遺構が現存しています。なお長島電燈所には「シ式二米射光機」が配備されていました。

 

長島の射光機とは違いますが、こんなんだったのではないかと言うことで百五十糎探照灯を載せておきます。(電気工学 19(4)(206)より引用・抜粋)

 

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鱗状の迷彩がよく残っています。

 

内部は二重構造になっていますので他地域の掩燈所より大きいです。

 

奥の部屋が射光機の格納庫と思われます。

 

色々置かれているので床面が十分確認できませんが、奥壁の下部に方形コンクリートがあります。

 

内部から外を見ていますが、掩燈所の前面に気になる物があります。

 

気になるのはコレ。コンクリートで縁取られた円形の凹みです。さらに矢印の所には先ほど掩燈所の中で見た方形コンクリートが置かれています。

 

円形の凹みは掩燈所入口の正面にあります。

 

円形のコンクリート部分に接合部が確認できます。

 

方形コンクリートです。

 

もう一つの方形コンクリートにはケーブル?が残っています。

 

これまで数多くの掩燈所を見てきましたが、このような円形の凹みが残っているのは初めてです。もしかして射光機を配置する照明座なのか?とも考えましたが、この場所は山頂直下で山影になりますし、照明座は現在灯台が建つ山頂にあったと推測していますので違うかと。

そこで考えられるのが、方向を変えるターンテーブルが置かれていたのではないか...と言うことです。照明座に向かう誘導路は掩燈所を出て左に伸びていますので、射光機を出庫→ターンテーブルに乗せて左に転換→誘導路を進む、と言った感じだったのではないでしょうか?

 

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ターンテーブルで左に転換すると誘導路が伸びています。

 

誘導路は左にカーブしています。

 

Uターンする感じで緩やかに上がります。

 

山頂には壱岐長島灯台が建てられていますが、おそらく灯台の建設で照明座は破壊されたものと思われます。

 

灯台は掩燈所の直上に設けられています。

 

 

以上、長島電燈所のレポートでした。

放牧される牛の親子を横目に島を後にします。

 

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[参考文献]

「現代本邦築城史」第二部 第十七巻 壱岐要塞築城史(国立国会図書館デジタルコレクション所蔵)

「日本築城史-近代の沿岸築城と要塞」(浄法寺朝美著、原書房)

「日本陸軍の火砲要塞砲」(佐山二郎著、光人社ノンフィクション文庫)

「壱岐要塞兵備資料」(防衛研究所)

「砲兵沿革史 第1巻 (制度)」(国立国会図書館デジタルコレクション所蔵)

「写真週報 (312) 」(国立国会図書館デジタルコレクション所蔵)

「偕行 (451);7月号」(国立国会図書館デジタルコレクション所蔵)

「偕行 (353);5月号」(国立国会図書館デジタルコレクション所蔵)

「電気工学 19(4)(206)」(国立国会図書館デジタルコレクション所蔵)