その2では基地北部の誘導路地区を見に行きますが、基地は築上町、誘導路は行橋市に位置しています。

 

誘導路とは航空機がエプロンと滑走路間を移動するために設けられた通路ですが、誘導路沿いには航空機を格納して空襲から守る有蓋・無蓋の掩体壕が多数構築されていました。

史料に記載の掩体数は「中型有蓋4・無蓋20、小型有蓋8・無蓋20、隠蔽170」ですが、今回の探索では有蓋掩体3基の現存を確認しました。なお行橋市によると無蓋掩体も残っているようですが、無蓋はコの字型に土塁を配した形で造られていましたので、現状ではその地形を確認するのは難しいのではないかと思います。

 

誘導路地区を拡大して確認できる掩体をマークしてみました。

 

 

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それでは遺構を見に行きます。

現存する有蓋掩体3基のうち1基が、行橋市の文化財として平成14年(2002)に市指定史跡「稲童1号掩体壕」となりましたが、今年令和5年(2023)3月には福岡県の史跡指定を受け、「海軍築城航空基地稲童掩体」に名称が変更されました。上記空撮では1号掩体がこれに該当します。

 

1号掩体は保存・公開されており、駐車場も完備しています。

 

道路から1号掩体を見ています。

 

近づいてみるとデカさを感じることができます。

 

コンクリート製の掩体です。

 

行橋市によると、大きさは盛土幅42m、盛土高8.5m、入口幅26.8m・高さ5.5m、奥行は23.5mで、昭和19年8月頃から誘導路や掩体壕の整備が開始されたようです。

この掩体には一式陸攻や銀河と言った陸上攻撃機が格納されたと思われます。

 

説明看板より銀河の格納状況図。

 

その1にも載せた銀河の写真。(大社基地滑走路跡の説明看板より)

 

内部を見ていますが、2つの大小カマボコがくっ付いた形状は海軍型掩体の特徴です。お尻部分は貫通していますね。

 

他地域の掩体でも見られますが、両側が土手のように隆起しています。

 

掩体前面にコンクリート床やレンガの道筋が残っています。当時物かな?

 

説明看板が設置されています。

 

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1号掩体の近くに機銃掃射を受けたレンガ塀が移設・展示されています。

 

裏側。

 

築城基地は主に3回の空襲(昭和20年3月18日、7月25日、8月7日)を受けていますが、近隣の一般市民も犠牲になりました。説明看板によると、機銃掃射痕は8月7日の空襲によるものだそうです。

 

奉安殿も展示されています。

 

説明書き。

 

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次は2号と3号掩体を見に行きます。

番号は勝手に名付けましたが、この2つは行橋市による史跡指定を受けていません。2号は丘陵地の林の中、3号は企業敷地内にあります。

 

まずは2号掩体です。

道路から林に入って10分以内に行き着きますが、ちゃんとした道があるわけではなく、しかも掩体前面以外はただの盛土にしか見えないのでなかなか見つけられないかも。いずれにせよ放置状態ですので自己責任で。

 

アバウトな計測からほぼ1号掩体と同じサイズかと思われます。

2回目の訪問時に日本戦跡協会様とご一緒しましたが、掩体前面に立って頂きました。大きさが分かるかと。

 

1号は南向きでしたが、2号は北北西を向いています。

 

近づいてみる。

 

お尻部分が開口しているのは1号と同じですが、位置が違いますね。

 

お尻から前方を見る。両側の土手も確認できます。

 

なお掩体前方には誘導路がありました。現在は道路となっていますが、柵があるので道路には抜けられません。

 

後方の開口部を外側から見ています。

 

覗いてみた|д゚)チラッ

 

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次は3号掩体ですが、2号掩体の南東側に位置しています。写真は斜め後ろより。手前が後方の小さいカマボコ部分、奥に前面の大きいカマボコがあります。

 

では前方から見てみますが、企業敷地内に位置していますので従業員の方に許可をもらって見せて頂きました。

 

パッと見で1号や2号と同じ大きさのようです。

 

内部。お尻は開口していませんね。

 

以上、現存する3基の有蓋掩体でした。続きは次回。

 

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[参考資料]

・⑤航空部隊-航空基地-4:海軍航空基地現状表 内地の部(防衛研究所 戦史史料・戦史叢書検索)

・⑤航空部隊-航空基地-48:大東亜戦時に於ける航空基地一覧表(防衛研究所 戦史史料・戦史叢書検索)

・⑤航空部隊-航空基地-4:海軍航空基地現状表 内地の部(防衛研究所 戦史史料・戦史叢書検索)

・築城航空基地(Ref No.C08011078400 アジア歴史資料センター)

・綜合目録 築城基地(Ref No.C08011078600 アジア歴史資料センター)

・明細目録 築城基地(Ref No.C08011078500 アジア歴史資料センター)

・第50航空戦隊戦時日誌 自昭和18年1月15日至昭和18年1月31日/1.経過(Ref No.C13120188600 アジア歴史資料センター)

・現状説明覚 昭和18年3月12日 第50航空戦隊(Ref No.C13120080500 アジア歴史資料センター)

・第51航空戦隊戦時日誌 自昭和19年1月1日至昭和19年1月31日/別紙(Ref No.C13120206100 アジア歴史資料センター)

・第706海軍航空隊戦時日誌 自昭和20年4月1日至20年4月30日 攻撃第405飛行隊 攻撃704飛行隊(Ref No.C13120362600 アジア歴史資料センター)

・第706海軍航空隊戦時日誌 自昭和20年3月5日至20年5月31日 攻撃第405飛行隊 攻撃704飛行隊(Ref No.C13120362500 アジア歴史資料センター)

・第762海軍航空隊戦時日誌 自昭和20年3月1日至昭和20年3月31日(Ref No.C13120378900 アジア歴史資料センター)

・第762海軍航空隊戦時日誌 自昭和20年2月1日至昭和20年2月28日(Ref No.C13120378800 アジア歴史資料センター)

・築上町歴史散歩ホームページ

・国土地理院 地図・空中写真閲覧サービス