今日は松山空港周辺にやって来ました。

 

場所はこちら。

 

松山空港の前身は海軍の松山航空基地でした。

昭和16年(1941)、飛行場を建設するため、伊予灘に面する吉田浜の海岸線で埋め立てが始まりました。昭和17年(1942)に滑走路を建設して航空基地として運用が開始され、昭和19年(1944)には飛行場東側に掩体や誘導路、北東の垣生山一帯に倉庫や兵舎に供する隧道と言った付属施設が設けられました。

運用開始以降は、松山で開隊した341空(19年フィリピンに転進)をはじめとして、263空(同南太平洋)や541空(同フィリピン)と言った複数の航空隊が、この地で訓練を行い戦地に飛んでいきました。

戦争末期の昭和20年(1945)には、優秀な搭乗員と局地戦闘機紫電・紫電改を配備した精鋭部隊の343空(剣部隊)が松山基地を根拠地として、襲来する米軍機に立ち向かいました。

戦後は連合軍の接収が終わったのち民間空港として整備され、松山空港として生まれ変わり今に至っています。

 

愛南町には紫電改が現存・展示されています。

 

 

なお、松山基地北側の北吉田地区には、昭和18年(1943)10月に開隊した松山海軍航空隊が置かれていました。この航空隊は実戦部隊ではなく、予科練の生徒を搭乗員として養成するための教育航空隊でした。

多くの練習生がここから巣立っていきましたが、戦争末期には防空壕構築などの戦備作業に従事することになりました。昭和20年(1945)6月には予科練の教育が凍結されたため、松山海軍航空隊は7月15日に解隊となりました。

 

松山の冠名を掲げた基地と航空隊が同居しているので思わず混同しがちですが、まったく別物と言うことで。

 

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松山海軍航空隊跡地には2つの記念碑が建っています。

 

まずは1つ目。昭和60年(1985)建立です。

 

銘板。

 

2つ目は平成13年(2001)建立です。

 

裏面を見ると再建立と彫られています。どうしても隊門跡地に建てたかったのかな。

 

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では松山海軍航空基地の遺構を見て行きます。

まずは1947年の空撮を掲載します。

 

航空基地の設備要領は以下の通りです。

・滑走路 126,000㎡ コンクリート舗装

・飛行場 846,000㎡

・誘導路 180,000㎡ コンクリート舗装

・掩体:中型24、小型39、分散30

・地上施設 格納庫、庁舎、士官室、病室、兵舎、倉庫など

・隧道 兵器庫、爆弾庫、倉庫、兵舎

・収容人数 士官130名、兵員1,300名

 

掩体地区には3基の掩体壕が現存しています。なお隧道地区の垣生山の裾野に複数の隧道(洞窟)が残っていますが、訪問時に確認しませんでした。

 

ちなみに、1975年の空撮には5基の掩体壕が確認できますが、その後2基が壊されましたので、現存するのは3基です。

 

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まずは1号掩体です。松山市の有形文化財として保存・公開されています。

 

案内板です。なお訪問したのは2021年3月なので2年半前となります。

 

真正面から撮影するだけのスペースがないので斜め前から。

 

真正面からだとスロープの手すりが被ります(^^;

 

前回高知航空隊の掩体を紹介しましたが、現存7基の開口部はすべて凸状でした。ところがココは凸ではなくアーチ状のカマボコになっています。凸は海軍、カマボコは陸軍の仕様と言う認識ですが、松山基地にはそれぞれのタイプが混在していたようです。

 

スロープの上から。

 

掩体の大きさは、高さ5m、幅23m、奥行12mです。ちなみに紫電改のサイズは、高さ4m、幅12m、長さ9mでした。

 

後方より。2つの大小カマボコがくっ付いているのは海軍型の特徴ですね。

 

高知の掩体には後方に出入口がありましたが、こちらはないですね。

 

では掩体の中を見て行きます。

 

説明書き。

 

もう1個。

 

航空機の後方格納部分。

 

壁面に文字が残っています。

 

説明板に書いてありますが、極天隊は第343海軍航空隊に属していた戦闘第401飛行隊の通称です。

 

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2号掩体は民家の駐車場として利用されているようです。

 

後方より。

 

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3号掩体は民家としてリフォームされていました。1号や2号と違って、前面が海軍型の凸となっていますね。

 

道路建設のため削られています。

 

そう言えば、昨年この物件が売りに出されたことが話題になりましたが売却されたのだろうか?

 

以上、松山海軍航空基地/松山海軍航空隊の紹介でした。

 

訪問年月:2021年3月

 

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[参考文献]

・⑤航空部隊-航空基地-4:海軍航空基地現状表 内地の部(防衛研究所 戦史史料・戦史叢書検索)

・⑤航空部隊-航空基地-48:大東亜戦時に於ける航空基地一覧表(防衛研究所 戦史史料・戦史叢書検索)

・⑤航空部隊-航空基地-90:航空基地図(本土関係)(防衛研究所 戦史史料・戦史叢書検索)

・戦史叢書019巻 本土防空作戦(国立国会図書館デジタルコレクション所蔵)

・戦史叢書057巻 本土決戦準備<2>九州の防衛(国立国会図書館デジタルコレクション所蔵)

・国土地理院 地図・空中写真閲覧サービス