後編では前浜掩体群を見に行きます。

 

1948年の空撮です。

 

ここで言う掩体(掩体壕)は、軍用機を敵の攻撃から守るための格納庫のことです。史料を見ると高知飛行場には中型15、小型9、W型17の掩体があったようですが、このうちコンクリート製の掩体壕が7基現存しています。

なおW型と言うのは、史料の「海軍施設本部 W工法構築要領」に書かれている木製の有蓋掩体壕のことだと思われます。昨年だか一昨年だったか、木製掩体の写真がニュースになって沸いていたけど、アレどこのやつだったっけな?

 

なお各掩体には滑走路に引き出すための誘導路が設けられていましたが、現在は確認することができません。現地説明看板の平面図が分かりやすいので掲載します。

 

1975年のカラー空撮で掩体の部分をクローズアップ。とても見やすいですね。

 

*******************************
では掩体壕を一つ一つ紹介します。

誰が番号を付けたか知りませんが、付与されている番号順に見て行きます。

 

1号掩体です。

 

田んぼの真ん中にあるので正面から近づけません。

説明では大小60個の機銃掃射の痕があると書かれています。特に前方部分に残っているようですが、撮影時は逆光だったので写真ではよく分かりません。グーグルマップのストビューで見た方が分かりやすいです笑

 

側面。

 

後方から。大小のカマボコが2つ付いている感じです。海軍の掩体壕に見られる特徴です。それと後方に出入口があります。

 

===========================

2号掩体です。

 

===========================

3号掩体は蔦に覆われています。

 

前まで畦道があったので中を覗いてみる。後方に出入口がない!?

 

トラクターで見えないだけでした(^^;

 

アーチを支える基礎部分。

 

===========================

4号掩体は現存7基の中で一番大きいです。

 

4号掩体の大きさは高さ10m、幅45m、奥行22mとあります。他の掩体が高さ5m、幅22m、奥行12mですので、一回り大きい感じですね。現存する掩体では日本最大級と言われています。おそらく一式陸攻や銀河と言った双発爆撃機を格納するために設けられたと思われます。

 

参考までに各機のスペックを載せておきます。

◎一式陸攻22型:高さ6m、幅25m、全長20m

◎銀河:高さ4m、幅20m、全長15m

◎白菊:高さ4m、幅15m、全長10m

 

ところで、高知空は練習機の白菊がメインの航空隊なのに、なぜこんなデカい掩体を設けたのでしょう?戦争末期には大型機の運用を計画していた、もしくは既に運用していた...と言うことなのでしょうか。史料では「中型15」となっていますので、このサイズが15基もあったと考えると、練習航空隊の域を超えて立派な攻撃部隊ですよね。まぁデカい掩体に白菊を2機入れていたとも考えられますが、はて。

 

ここで「高知海軍航空隊 引渡目録」を見ると、終戦時に一式陸攻を1機保有していたようです。掩体には格納されておらずエプロンに駐機していたようですが(^^;

 

ついでなので終戦時の高知空保有機体と機数を書いておきます。

 

1.高知飛行場

・白菊 16機

・九三式中等練習機(赤とんぼ) 2機

・二式陸上中間練習機 1機

・零戦 3機

・彗星 2機

・一式陸攻 1機

・陸軍機 1機

 

2.窪川飛行場(高知第三)

・白菊 27機

 

窪川と言うのは高知飛行場から西南にある窪川地区に戦争末期に作られた秘匿飛行場です。本土決戦に備えて、まさに秘匿されていたのでしょうね。

 

それでは掩体の紹介に戻って...。

正面より。凸部の形も他とは異なっていますね。

 

後方。

 

写真では伝わりませんが、まぁデカい代物です。

 

中を覗いてみる。

 

内部。

 

天井を仰ぎ見る。鉄筋入っていますね。

 

ごみが散乱しています。写真は2年前ですが、現在はどうなっているんだろ?

 

遠景。

 

===========================

5号掩体は見学用に整備されています。

 

説明書き。格納の様子がイラストで描かれています。

 

===========================

6号掩体です。

 

===========================

最後は7号掩体ですが、後方がぶち抜かれて道路と用水路が走っています。

 

短いトンネルってことで(^^;

 

それでは、1フレームに4つの掩体壕を収めたところでお別れとします。

 

以上、高知海軍航空基地のレポートでした。

 

訪問年月:2021年3月

 

==========================

[参考文献]

・⑤航空部隊-航空基地-4:海軍航空基地現状表 内地の部(防衛研究所 戦史史料・戦史叢書検索)

・⑤航空部隊-航空基地-48:大東亜戦時に於ける航空基地一覧表(防衛研究所 戦史史料・戦史叢書検索)

・⑤航空部隊-航空基地-90:航空基地図(本土関係)(防衛研究所 戦史史料・戦史叢書検索)

・戦史叢書019巻 本土防空作戦(国立国会図書館デジタルコレクション所蔵)

・戦史叢書057巻 本土決戦準備<2>九州の防衛(国立国会図書館デジタルコレクション所蔵)

高知報  第6号 自昭和20年5月25日至昭和20年5月28日 天1号菊水8号作戦/2 経過(Ref No.C13120323800 アジア歴史資料センター)

引渡目録 高知海軍航空隊(Ref No.C08011076200 アジア歴史資料センター)

・高知海軍航空隊通信所跡 現地説明会資料(高知大学・南国市教育委員会)

・高知空港史(高知県企画部空港輸送課 1984)

・国土地理院 地図・空中写真閲覧サービス