続編となりますので、徳山要港についての説明は昨日の記事をご覧下さい。

 

 

要港境域図です。

 

赤線が要港の境域を示すラインです。昭和13年3月25日付け官報に掲載の図から推定して引いていますが、まったくの推定と言うわけではありません。

赤丸と付与番号を描き込んだ位置には「徳山要港境域標」と刻まれた標石が立っており、全部で4本の現存を確認しています。この4本を境域ラインに照らし合わせたところ、すべてライン上の屈折する部分に立っていることが分かりました。

標石は一般市民に境域を示すために埋設されたと思われますが、それぞれの標石には第〇号と言った形で番号が付与されており、確認したのは3号、11号、28号、32号となります。地図で見ると左回りに規則正しく番号順に並んでいますので、本土側の陸地のライン上には30本以上の標石が埋設されていたと推察されます。

 

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それでは現存する4本の標石を見ていきますが、すべて登山道の整備された山の山頂に埋設されています。

 

1本目の第3号は、下松市と光市の県境に聳える茶臼山(標高348m)にあります。

周南アルプスを形成する一つで、登山者の多い山です。登るルートはいくつかありますが、国道188号線からの登山口だと約50分で登頂できます。

 

正面は「徳山要港境域標」、右側面は「昭和十三年四月」と刻まれています。

 

裏面は「海軍省」、左側面は「第三號」です。

 

4面を並べてみました。

 

こんな感じで立っています。三角点と並んで埋設されていますね。

 

山頂から光市街地が一望できます。

 

眼下は下松市の笠戸湾と笠戸島。左にはエネオスの石炭貯蔵ドームが見えます。

 

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2本目の第11号は、下松市北部の大将軍山(標高486m)の山頂にあります。

米泉湖のほとりに聳える山で、山頂からは360度ビューの景色が楽しめます。快適な登山道を歩いて登山口から約30分で登頂できます。

 

徳山要港境域標 第一一號です。

 

 

他の2面は茶臼山の標石と同じなので省略しますが、こちらも三角点のそばに埋設されていますね。

 

笠戸湾と下松市街地がよく見えます。

 

それでは次に向かいます。

 

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3本目の第28号は、四熊ヶ岳(しくまがだけ、標高504m)にあります。

周南市西部に位置するこの山には四熊権現社が鎮座しています。登山道は北東の下権現社からのルートと南西からのルートがありますが、登山口からおよそ40~50分で登頂できます。

 

境界標の後方は四熊嶽大権現奥院宝殿です。

 

第二八號

 

尾根に上がると一ノ鳥居が現れます。そこから参道の始まりで、ニノ鳥居→不動明王像→三ノ鳥居→神社と進みますが、一ノ鳥居の横に、日露戦争での黒溝台の会戦で戦死した兵士の紀念碑が建てられています。

 

なお四熊ヶ岳東方の峰には、ひまわり子育て観音と呼ばれる大きな観音像が立っています。これは地上からもよく見えますね。

 

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4本目の第32号は、四熊ヶ岳のさらに南西の若山(標高217m)に埋設されています。

この山には大内氏の重臣だった陶氏の本城が置かれていました。登山道も整備されており、30分程度で登頂できます。

 

境域標は本丸のあった山頂に立っていますが、現存する4本の中で一番文字が掠れて読みにくいです。

 

左は「徳山要港境域標」、右は「第三二號」の文字。

 

右は大津島、正面は黒髪島、左は仙島。その後方に大島半島です。

 

ところで、若山城の九代目城主は陶晴賢でした。主君大内義隆に謀反を企て、討ちとった後は大友晴英(のちの大内義長)を当主として擁立しましたが、厳島で毛利元就と戦い敗北、自害しました。

 

登山口でめっちゃ宣伝しています。

 

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現存する4本の境域標を紹介しましたが、他にも残っていないのかが気になります。

 

冒頭の境域図を再度掲載します。

 

本土側の境域ラインを見ると、現存する境域標の箇所以外に(A)と(B)の2か所で折れ曲がっているのが分かります。この2ヵ所は推定して書いていますが、(A)は標高561mピーク(一等三角点埋設、点名:西谷ノ岡)、(B)は標高168mピーク(三等三角点、点名:大藪)に仮置きしています。

それぞれの山を調べたところ境域標を発見することができませんでしたが、今後は周辺の山々をはじめとして境域ライン上にある三角点の置かれた山をしらみ潰しに探してみようかと考えています。ただそれらの山々には登山道がないんですけどね(^^;

 

以上、徳山要港境域標でした。