その3では赤丸の所からスタートします。

 

排水溝のある道筋を辿ります。

 

段差があります。コンクリートの瓦礫が残っているので階段だったのかも。

 

段差を上がった先の平坦地に横長の建物基礎が2棟残っています。

まずは建物跡Aです。

 

鉄のボルトがことごとく削られています。

 

続いて建物跡Bです。

 

建物基礎を後にして東に進むとまた破壊された段差があります。

 

段差を上がると沢に架かる橋になっていました。見取図で軍橋④です。

 

この橋、アーチ状になっているんですよね。分かるかな?

 

橋の下を見ています。

 

沢はこんな感じ。

 

軍橋④の先は平坦地ですが、奥に行くと建物跡Cがあります。先ほどのAやBよりは小さめな建物です。

 

建物の脇から沢に流れ出る排水溝が設けられています。

 

沢は軍橋④の所から折れ曲がるのですが、その先には軍橋⑤が架けられています。

 

わざわざ橋を架けているのだから軍橋⑤の先にも建物があると思いましたが何も残っていませんでした。

と言うことで確認した建物跡は3つでしたが、史料によると火薬支庫、薬莢庫、填薬弾丸庫、砲具庫などが設けられたようですのでそのいずれか、もしくは兵舎と言ったところでしょうか。

 

では少し戻って建物A、Bのある平坦地から南東に上がる道筋がありましたので行ってみます。

 

道筋の先は平坦地。窪地が1つだけありました。

 

窪地。

 

以上が砲台周辺の遺構でしたが、この後は観測所を探しに行きました。

史料の要図には右、左、低地と3か所の観測所がマークされています。おそらくそれは計画であってすべて構築されていないと思いますが、営造物として観測所が書かれているので少なくとも1つは作られたのではないかと思われます。

ただ場所は不明ですので、海を見渡せる高地に当たりをつけて山に登ってみました。最初は道筋があったのですがすぐに消えたので、その後は目標地点まで直登、、、。普段ならともかく毒蛇ハブのいる島ですることではないでのですけどね(;'∀')

ともかく当たりをつけた1ヵ所目は不発でしたが2ヵ所目で遺構を発見しました。ただ、探していた観測所ではなく謎の陣地跡でしたけどね(^^;

 

謎の陣地跡は砲台の左翼前方、標高150m付近にありました。

 

見取図も描いてみましたので掲載します。遺構の用途は推定です。

 

標高150m高地の陣地跡にはコンクリートで縁取りされた大きな円形窪地が3つあります。標高的にも見た感じでも高角砲台だと思いました。戦争後期に海軍の大島防備隊が高角砲台や決戦陣地を島内各所に設けていたのでその1つかなと。

ただ、史料にはこの場所に高角砲台が置かれた記録が残っていないんですよね。終戦直前に構築中だったから記録されていないのかもしれませんが、もしかしたら大東亜戦争時に奄美大島要塞重砲兵連隊第6中隊が築いた陣地と言う可能性もあります。

第6中隊陣地とするなら三八式野砲がココに配備されたはずですが、野砲を配備するには高所過ぎるし、砲座と思しき円形窪地はすり鉢状に深く掘られているので野砲を置く感じではないんですよね。

ですが『下関重砲兵聯隊史』に掲載の配備要図では、この陣地跡の付近に野砲がマークされているので、やはり第6中隊陣地なのかもしれません...。

 

では陣地跡の写真を掲載します。

 

外周にコンクリートの壁が残る砲座

 

砲座の中に入って撮っていますが深く掘られているのが分かるかと。これで脚付きの三八式野砲を置いて射撃するのは厳しいかと。

 

別の砲座を見ると、コンクリートが二重に築かれているのが分かります。

 

ここで対馬に築かれた小松崎砲台の野砲砲座を見てみます。

 

二重と言うか、外周が溝になっていますね。皆津崎と似た感じにも見えますが、小松崎の方には野砲の砲床を置いたと思われる円筒状の台座があります。

 

これは脚付きの三八式野砲を海岸砲台用に配備するための砲床を置いた台座だと推測していますが、皆津崎には残っていないので、やはり野砲砲座より高角砲座じゃないかと思うところです。

 

底面が浅めで平らな円形窪地が1つありますが、これなら野砲の砲座かも...と思えるんですけどね。

 

横穴壕

 

観測所と思しき瓦礫が転がる方形の区画。

 

縦筋の入ったコンクリート壁が残っています。

 

この方形区画の遺構が皆津崎第一砲台の観測所だったりして(^^;

 

これにて確認した遺構の紹介が終わりましたので、景色を眺めてお別れとします。

 

無事帰還してのヤドリ浜。

 

ホノホシ海岸付近にある海に並ぶ電柱群、、、エビの養殖場らしいです。

 

大島海峡東口。矢印の辺りが皆津崎砲台です。

 

以上、3回に亘ってお送りした皆津崎第一砲台のレポートを終わります。

 

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[参考資料]

「現代本邦築城史」第二部 第十五巻 奄美大島要塞築城史(国立国会図書館デジタルコレクション所蔵)

「日本築城史-近代の沿岸築城と要塞」(浄法寺朝美著、原書房)

「明治期国土防衛史」(原剛著、錦正社)

「瀬戸内町内の遺跡2」(鹿児島県大島郡 瀬戸内町教育委員会)

「瀬戸内町内の遺跡3」(鹿児島県大島郡 瀬戸内町教育委員会)

「下関重砲兵聯隊史」(下関重砲兵聯隊史刊行会)