北部砲台は小高い所に置かれた観測所を挟んで東側に十二糎加農砲の軽砲砲座、西側に二十四糎加農砲の重砲砲座が設けられています。

 

今日紹介する重砲砲座周辺を拡大して掲載します。

 

軽砲砲座から道路を下って入口に到着。ちなみに軽砲の砲座標高は30mであるのに対し、重砲は15.85mと低い位置に築かれています。

 

入ると左手に削平地があり、レンガ積みの桝や瓦礫が転がっています。

おそらく厠跡では?と思いましたので見取図にはそのように記載しました。

 

スロープを下って砲座後方の塁道に下りていきます。

 

この撮影位置から左を見ると、観測所に繋がる階段があります。

 

階段を上がった先は削平地Bですが、丸く成型された石が残るのみです。

 

丸い石は蓋のように見えますので井戸?貯水槽?があったのではないかと思われます。谷側を見ると排水溝が確認できます。

 

観測所に向かう道は落石により立入禁止の札が掲げられています。

 

塁道に下りてきて砲側庫①、、、2年前も今も水没しています。

 

左手に第1砲座に上がる階段がありますので行ってみます。

 

第1砲座です。

 

胸墻は石積み、床面はコンクリートなのですが床は粉々になっています。右に見える瓦礫の塊ですが、第2砲座に残る毒ガス工場時代のタンクを置く台座の素材に似ていますので、この第1砲座もタンク置場になっていたのではないかと思われます。

 

毒ガスタンクの台座が置かれた第2砲座です。

 

案内板に写真付きで説明があります。

 

砲床を見ると、二十四糎加農砲の据付部分に円状に配置されたアンカーボルトが残っています。

 

通り抜け禁止の看板が置かれていますが、第2砲座と第1砲座はこの通路で行き来できたようです。

 

横墻の下には砲側庫②があります。階段で降りる感じですね。

 

砲座は4つありますが、第1/第2と第3/第4砲座の間の中央横墻部分にトンネルが設けられています。

 

トンネル内には砲側庫③がありますが、内部は水没しています。

 

2年前に訪れた時にはトンネル全体が水没していたので通行できませんでした(^^;

 

トンネルを抜けて振り返って見ています。第3砲座にあがる階段がありますが...。

 

第3砲座は毒ガス工場時代に出入口の道を作ったため壊されています。

 

横墻部分の砲座の石積みはかろうじて残っています。

 

第4砲座はタンク台座もなく一番きれいな状態です。

 

砲床のアンカーボルトもよく残っていますね。

 

砲座左側後方にある排水溝。

 

第4砲座後方から来た方向を見ています。

 

砲側庫④です。

 

樋受けの金具が残っています。

 

砲台敷地の西の端は広場になっています。

 

この広場には北部電燈に電力を供給する電燈機関舎が置かれていたようです。

思えば、同じ芸予要塞仲間の来島北部砲台でも同様に3つの掩蔽部の広場脇に機関舎が置かれていました。それなりに大きな建物なので、狭い島内で敵から曝露しない場所を確保するのは苦労したかと。

 

来島北部砲台敷地内に置かれている電燈機関舎です。

 

L字に配置された掩蔽部があります。

 

横並びの2つは内部で繋がっています。もう1つの内部を見ると、繋がっている2つと比べて狭く造られています。

 

最後に広場から一段高い場所にある建物跡を見に行きます。

 

遊歩道を上がると平坦地。見取図では削平地Cとしました。上りの排水溝と下りの排水溝がぶつかっています。

 

排水溝の後ろに横長の建物基礎があります。

建物後方は山の斜面、前方海側は土塁が設けられて目隠しされています。砲具庫や弾薬関連の建物でしょうか?

 

削平地Cの奥から見ています。

 

矢印のところに階段が見えますが、コレを上がって進むと中部堡塁に行くことができます。2年前に訪問した時はこの遊歩道を含めて中部堡塁に繋がる道はすべて通行止めとなっていましたが、今回2022年10月の訪問では解除されていました。

 

それでは、射撃の首線となる忠海海峡を眺めてお別れです。

 

以上、大久野島北部砲台でした。

 

 

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[参考資料]

「現代本邦築城史」第二部 第二十巻 芸予要塞築城史(国立国会図書館デジタルコレクション所蔵)

「日本築城史-近代の沿岸築城と要塞」(浄法寺朝美著、原書房)

「明治期国土防衛史」(原剛著、錦正社)

「日本の要塞 忘れられた帝国の城塞」(学研)

「日本陸軍の火砲 要塞砲」(佐山二郎著、光人社NF文庫)

「3月19日 兵器監部 砲床築設并火砲据付竣工の件」(Ref No.C10071271700 アジア歴史資料センター)

「芸予海峡防禦大久野島北部砲台竣工再延期並建築費増額の件」(Ref No.C02030410200 アジア歴史資料センター)

「工兵第2方面 大久野島北部砲台(E点)建築の件」(Ref No.C03023070600 アジア歴史資料センター)