神ノ島高砲台は、長崎湾口北側に位置する神ノ島に設置されました。

 

地図で場所を確認します。

 

砲台の履歴です。

◆起工:明治31年(1898年)4月19日

◆竣工:明治33年(1900年)3月31日(?)

◆備砲:28㎝榴弾砲 8門(明治34年7月備砲完了)

◆標高:78m(砲座位置)

◆経過:

・明治37-38年(1904‐05年) 日露戦争で動員下令

・大正8年(1912年)要塞整理にて6門編成となる

・大正12年(1916年)要塞再整理要領にて4門編成となる

・昭和11年(1925年)砲座2、砲側庫2を除籍、4門砲台となる

◆長崎要塞の概略はこちら→→→

 

射撃の首線は長崎湾に出入りする艦船の主航路であった北西の海面にありましたが、28㎝榴弾砲は360度回転できましたので、湾内に侵入された場合は逆方向への射撃も想定していたと思われます。

なお、現在の砲台跡地は神ノ島公園となって多くの遺構は消滅しましたが、砲座1つと掩蔽部が残されています。

 

では遺構を見に行きます。

 

看板を右折して上り坂を進んで行きますが、この写真の周辺に兵舎など棲息施設が置かれていたようですので、兵舎と砲台を繋ぐ交通路として当時も存在した道だと思われます。

 

到着しましたので公園案内図を確認します。

現存する遺構を書き込んでみました。

 

そして当時の砲台の見取図を推定して描いたのがこちら。

4つの砲座に対して5つの砲側庫を描いたので少々怪しいですが、まぁ参考程度に。

 

右が4番砲座、その奥に掩蔽部が2つ並んでいます。

 

4番砲座の全景です。

 

右側は広場になって削られていますが胸墻、横墻とも高く盛土されて摺鉢形の砲座となっていました。1つの砲座には28㎝榴弾砲が2門配備されていましたので全部で4つの砲座がありましたが、現存するのは最左翼の4番砲座だけとなっています。

 

28㎝榴弾砲の砲床部分(左)です。花壇になっていますね(^^;

 

右の砲床部分も同様ですが荒れていてよく見えません。

 

胸墻の左側を見ています。

石造りで即用弾丸置場のアーチ部分だけレンガ積みとなっています。

 

左側胸墻部分の丸い穴。伝声管です。おそらく観測所付属室に繋がっていると思われます。ちなみに右側にも伝声管の穴がありますが、そちらは3番砲座との連絡用かと。

 

砲座の正面となる部分に石段が設けられています。

 

正面から見ています。見難いですが石段は両側に設けられています。

石段の上に胸墻の盛土部分を上がる階段がありますが、崩れているし藪っていますので写真では分かりませんね(^^;

 

砲座左後方に石がゴロゴロ。どこを構成する石だったのでしょうね。

 

そして右後方にはレンガ積み。

おそらく横墻下に設けられた地下砲側庫の壁部分だと思われますが、公園整備時に新たな石垣と横墻上に広場が設けられましたので、砲側庫は消滅しています。

 

4番砲座右側から広場を見ています。3番、2番、1番砲座と並んでいた所です。

 

では砲座左側にある2つの掩蔽部を見てみます。

 

『日本築城史』には砲座と砲側庫の図面が掲載されており、砲側庫は階段で下りるタイプの地下式でしたので見取図もそれに倣って描きました。ただ、この現存する砲座最左翼に位置する掩蔽部は砲座の床面の高さと同じで地下式になっていません。最左翼だけ地上式だったのかそれとも図面が間違っているのか、、、他の掩蔽部(砲側庫)は消滅しているので確認しようがありません。

 

向かって右側の掩蔽部。見取図では砲側庫としました。

掩蔽部の顔が少し引っ込んでいます。そして両側の壁は分厚いレンガ積み、、、弾薬置場として利用された掩蔽部の特徴です。

 

対して向かって左側の掩蔽部の引っ込みはほんの僅かです。

 

左側の掩蔽部を正面から撮りたかったですが狭くて無理でした(^^;

見ての通りドアや窓から内部を窺うことができませんでしたが、この上に左翼観測所が設けられていましたので、おそらくこの左側の掩蔽部は観測所の付属室(司令室)だったと思われます。

 

扉のヒンジが残っています。

 

では階段を上がって観測所に向かいます。

材質的に見て当時の階段ですね。

 

半分上がって見下ろしてみる。

 

階段を上がると観測所、、、ではなく展望所ですw

公園化で観測所は消滅してしまいました。

 

射撃の首線方向の景色です。

左側は伊王島、真ん中は松島、右側は長崎市本土となります。

 

180度回転して長崎湾側を見ています。

 

長崎湾の入口です。矢印の箇所が砲台が置かれた蔭ノ尾島ですが、造船所進出で島のほとんどが削られてしまいました。

 

以上で前編終了です。続きはまた明日。

 

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[参考文献]

「現代本邦築城史」第二部 第六巻 長崎要塞築城史(国立国会図書館デジタルコレクション所蔵)

「日本築城史-近代の沿岸築城と要塞」(浄法寺朝美著、原書房)