『きまぐれオレンジ★ロードあの日にかえりたい』エンディング撮影 | 日本語あれこれ研究室

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 最近、『きまぐれオレンジ★ロード あの日にかえりたい』のことをツイッター等で書いていたら、作品の内容についても一点だけ書いてみたくなった。
 分かる人にだけ分かってもらえればいい内容です。でも星里もちる氏にはぜひ読んでほしいかな。

 『あの日』で一番アイデアを注ぎ込んで、そしてうまくいったと思っているのはエンディングの映像です。
 これは現物を見てもらわないとちょっと分かりにくいのだが、画像のような感じの映像。左のほうでフィルムが下から上に流れていくのだが、その中で各コマの絵がⅠコマづつ動いているのである。
 画面上のフィルム全体を見ていると映像が下から上へ流れているように見えるが、あるⅠコマだけに注目して見ているとそのコマの中でアニメがきちんと動いているという仕様。

 実際に映画で見るとけっこう面白いです。

 

 

 撮影方法はきわめてアナログである。
① 本編の中から、キャラクターの全身が動いているカットを20数カット選ぶ。
② それぞれのカットの中でも特に動いている部分を、動画にして各30枚~40枚くらいづつ抜き出す。
③ その20数カット分をまとめてワンカットにして1コマ撮りするため、一枚のタイムシートにまとめ直す。元の動きが2コマ作画であろうと3コマ作画であろうとかまわずに、すべて1コマ撮りで打つ。約30数秒ワンカットという素材になる。
④ それを35ミリフィルムで通常撮影し、1本のポジフィルムとして撮影に持ち込む。

 ここまでが第一段階であり、第二段階としてこのポジフィルムを撮影台の上でもう一度撮影する。これは、撮影監督の金子さんと、おれとの二人で行った。
 

 

 第二段階の作業は以下のような感じ。
⑤ 撮影台のフレーム外のガラスに、フィルムのパーフォレーションを固定するためのガイドピンを、上下に各数本立てる。有り体に言うと、ゼムクリップを曲げてガムテープで貼り付けた。
⑥ このガイドのピンにフィルムを固定してガラスで押さえ、下から透過光を当てて7コマ撮りしていく。7コマというのは大体の勘である。
⑦ ただし、透過光の最適な明るさが分からないので、初めはライトの強さを何通りか変えてテスト撮影。明るさが決定してから数日後に本番撮影。
⑧ 35ミリフィルムのパーフォレーションは1画像につき4個なので、7コマ撮影するごとにフィルムを穴4個分上にずらしては、また7回シャッターを切る。その繰り返し。
⑨ 最終的に、4分あまりのエンディングフィルムが完成。
 

 

 こういう作業はラッシュが上がるまでドキドキだし、だからうまくいったときの喜びはひとしおだ。セルをフィルムで撮影していた時代の大いなる楽しみのひとつだった。
 今の目で見るとこの映像にものすごい工夫があったようには見えないかも知れないし、モニター上で簡単にできると思われてしまうかも知れない。
 そのあたりが、デジタル撮影になってCGも当たり前のように使えるようになった時代の、少し寂しいというか物足りなさを感じる点でもあるのです。