「絶対少年」の頃 | 日本語あれこれ研究室

日本語あれこれ研究室

日常生活の日本語やメディアなどで接する日本語に関して、感じることを気ままに書いていきます

 

 

 「アニメーション」テーマの時は、おれの手元のアフレコ台本を年代順に掲載しているのだが、今回「絶対少年」まで来た。放送が20055月からなので、着手したのは多分2004年の前半だろう。もう15年近く経つんだな。

 初めて発表することだが、自分の中ではこの「絶対少年」が過去の仕事歴で最も愛着がある作品であり、内容的にもとても好きな作品なのだ。そんな思い出を少々語ることをお許し願いたい。

 

 自分が演出の仕事を始めてから2~3年目の頃に知り合った伊藤和典氏と久しぶりに組んだ作品であったことが大きい。しかも内容は完全オリジナルもの。伊藤さんの考えていることは結構分かるのでやりやすい。

 さらに、この作品を作るに当たって自分として考えていたことを書いてみる。

 

 まず最初に総作監の関根くんと相談して決めたことはというと……。

 昼色(ノーマル)・夕色(黄)・夜色(青)の3パターンを決めて、色指定(状況による色替え)はその3つに限定すること。とかく最近のアニメは時間帯や場所や光源によって画面の色彩を細かく設定しすぎるキライがあるので、ざっくりとシンプルにして分かりやすくした(旧知の色彩設定・一瀬美代子さんがいなければ出来なかった技)。

 ストーリーが地味なので、画面がぎらぎらしないことも心掛けた。背景の色からもキャラの色からも、「赤」と「緑」とを抜くことにした。これはかなりの冒険だったが、とにかく徹底してみた。

 

 声優の演技に関しても決めごとがあって……。

 とにかく「声を張らない・アニメっぽく演じない」ということを意識してもらった。要するにおれ好みの演技なのだが、この作品にはそうすることが絶対に必要だと思い込んでいたのだ。これをやると効果音や音楽とのからみなんかも通常とは違ってくるので首尾よくいく確信は必ずしもなかったが、とにかくそうしてもらったのだ。

 正樹役の甲斐田ゆきさんが後で教えてくれたが、この作品の「演者三原則」として「張らない・抑揚つけない・演技しない」ということが声優たちの間で言われていたとのことです。

 その甲斐あって、歩役の豊永利行くんも希紗役の鈴木晃子さんも素晴らしかったと思っている。

 

 もう一つ印象的だったのは、自分の仕事歴の中で通常作画と3Dとを組み合わせた初めての作品だったことだ(フル3Dはそれ以前にも経験していたが)。その組み合わせ方も初めて理解したし、現在では普通のことだけどあの時は本当に勉強になった。「ダグオン」OVAで制作デスクをしていた岸克芳くんが撮影監督となって現れたので、気安い間柄なのをいいことに、ずいぶん無理を聞いてもらったと記憶している。

 

 以上のような幸運も色々とあり、本当に好きな作品だ。

 でも何と言っても想い出に残っているのは、亮介役で出演した故・斎藤恭央くん(桜塚やっくん)とおれとの二人が、作品の打ち上げの席上で多くのスタッフ・キャストたちを前に漫才を披露したことだな。楽しかった。