正義の味方は怖いです | 日本語あれこれ研究室

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日常生活の日本語やメディアなどで接する日本語に関して、感じることを気ままに書いていきます

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 JRなどの駅に貼られているポスターである。見るたびに、なんかイヤ~な気持ちになるのである。

 ここに集めた歴代の三種類はそれぞれマンガ家が違うと思われるが、まずどれも絵がヘタ。……というか不快になる類の絵だ。

 1のマンガの、女の子の手の異常な小ささがまず気になる。それに「犯罪だ」と言ってる男の体型・顔とか、「痴漢ですって?」のおばさんの異様な風体とかも。

 2の場合は、駆け寄っている手前の駅員の顔が気持ち悪い。それに「犯罪だ!」と言ってる男のヘンに小さい口と、それに合わせた小さい口ヒゲは一体どういうつもりだ?

 3の「痴漢です!!」の女は、どうもずるそうに見える。「卑劣な!」「許せん!!」のコマの三人は、なぜに全員こんなに陰湿そうな顔をしているのであるか?

 

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 絵のことはともかく……。このシリーズの恐ろしいところは、女の子が「痴漢です」と発言しただけで、周囲の人間たちがいきなり「犯罪だ」と決めつける点だろう。女の子の勘違いかもしれないとか狂言かもしれないとか、電車が揺れてちょっとぶつかってしまったとか、そういう可能性は一顧だにされることなく、即座に「犯罪」「卑劣」「許せん」となってしまうのだ。

 きっと女の子が「この人です」と誰かを指差せば、その男の訴えなどは完全に無視されて彼は大勢によって召し捕られ、警察に突き出されるのに違いない。

 まるっきり、周防正行監督の『それでもボクはやってない』ではないか。このポスターは、「痴漢はとにかく捕まえろ。冤罪でもかまわん」と主張せんばかりである。あの映画の中の事件と同じで、犯人にされた側の苦しみは同情にも値しないかのようだ。

 3の「被害者」の女は、気に入らない男を陥れるためなら平気でウソをつきそうな顔に見える(って、おれだけ?)