今まで、何かの作品に自分から志願して仕事をさせてもらいに行ったことが二回だけある。今回はその二回目、Gレコ編です。
一昨年の忘年会か何かで、サンライズの元プロデューサーの人が「富野さんが新しいガンダムを作ってる」と言ったので、おれは「望月がやりたがってるって伝えといて」などと軽く口走ってしまった。後日「Gのレコンギスタ」のプロデューサーからホントに電話が来て、絵コンテ一本やってくれないかと言う。「ああいう複雑な作品がやれるのだろうか」とおれは内心で焦りながらも、引き受けることになったのだった。
富野監督作品にからみたかったというのは事実で、かつて富野さんとはちょっとだけ関わったことがあったのである。だから一度はきちんと仕事をしてみたいと思っていたのだ。少し関わったというのは、『ガンダム新体験
グリーンダイバーズ』という短編を監督したときのこと。2Dと3Dとを組み合わせた作品で、プラネタリウムで上映するためのものだった。これの作中に「エウーゴのパイロット」というキャラ(有体に言えばアムロ)が登場するのだが、そのキャラのセリフだけを富野さんに頼みに行った。初対面であった。
その後、アフレコとかプレミア試写会とかにも富野さんはわざわざ来てくれたのだった(それには及ばなかったんだけどね。おれが緊張するから)。
Gレコで担当したのは第14話「宇宙、モビルスーツ戦」。コンテ打ちは監督助手の人が行い、富野さんは傍に座って聞きながら、設定が足りない場所のラフなイメージボードをマーカーで着色しながら何枚も描いてくれていた。「望月さん、コンテの絵を丁寧に描いちゃいけませんよ」とも言われた。
キャラクター担当の吉田(健一)くんとも久し振りに再会。立派になったものだ、と素直に感心する。
作業は、内容はともかくスケジュールでは迷惑をかけないようにと、スピードを落とさないように頑張ってみた。しかし監督自身の脚本が面白くて、あまり苦労することなく二週間ちょうどで370カットほどを上げることができたのだ(自己記録更新か)。
オンエアを見たら、コンテのおよそ七~八割は監督によって修正されほとんど原型を留めていなかったが、特にショックは受けなかった。何しろセリフやストーリーまで脚本と大幅に変わっていたのだ。おそらく富野さんは、コンテマンのコンテを叩き台にしてさらに流れを再考し、作品を再構築していくのだろうと推察される。有意義な「ガンダム新体験」であった。
画像は「ふしぎ遊戯」。コンテだけで演出はしていないがアフレコ台本がなぜか手元に。