参加しちゃうぞ☆アトム編 | 日本語あれこれ研究室

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今まで、何かの作品に自分から志願して仕事をさせてもらいに行ったことが二回だけある。今回はその一回目、アトム編です。

 

 2003年「ASTRO BOY鉄腕アトム」の放送が始まって少し経った頃のこと。「アトムはセルアニメだ」という情報が伝わってきた。つまりデジタルではなくてフィルム撮影ということだ。テレビアニメの大半がデジタル撮影に移行し終わっていたのはおよそ2000年ごろのような気がするので、2003年時点でセル、というのはちょっとした驚きだった。

 それを聞いたときおれは、アトムの演出をやれば人生最後の「撮出し」ができるかも知れないと考えた。撮出しをすることなど今後ないだろうと思っていたからだ。

 ※注 撮出しというのはフィルム撮影時代の作業工程で、演出家が撮影前の素材(セル・背景・シート)の最終チェックをすること。

 アトム開始の少し前にたまたま小中和哉監督とは知り合っていたので、直接電話を掛けた。絵コンテ・演出をぜひやらせてもらえないだろうか、ということを告げると、その時点で手付かずのシナリオは何と一本しか残っていないとのことだった。けっこうスケジュールが先行していたらしいのである。

 

 その一本の絵コンテを担当することになった(第41話「巨人の記憶」)。打ち合わせのときに話を聞くと撮影はやはり35ミリで、CGはあまり使えないとのこと。確か30だったか40だったか、1話あたりのCG使用カット数に制限があり、絵コンテ段階でそれを指定しなければならなかったと記憶する。

演出は担当できなかったので最後の撮出しはならなかったが、手塚作品に関わるのは初めてだったし、楽しんで作業したのであった。脚本が「ウルトラマンティガ」で個人的に注目していた太田愛さんだったのも嬉しかったし。

 30分物の最初のテレビアニメシリーズであるアトム、そしてフィルムによる最後のテレビアニメシリーズ(サザエさん除く)であるアトム。とにもかくにもおれは、このようにして「鉄腕アトム」にギリギリ参加することができたのである。

 

 

 画像はOVA「誕生~Debut」。