恥を忍んで | 日本語あれこれ研究室

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 以前、知り合いで「稚拙」という言葉をいつも「ちくつ」と発音する人がいた。「屈」や「掘」の字と同様に「出」が含まれているので間違えて覚えていたのだろう。そしてこの人の場合はなぜかしょっちゅう「ちくつ」を使うのだった。

 また、「便宜上」をいつも「びんせんじょう」と言うプロデューサーもいた。「宣伝」の「宣」の字と混同していたのだと思われる。この人もなぜか「びんせんじょう」を頻繁に使っていた。

 

 覚え違いは、誰しもあることだろう。

 呉智英でさえ、「キャスティング・ヴォート(vote)」を長い間「キャスティング・ボード(board)」だと思い込んでいたことを告白している(『言葉につける薬』)。

 

 そこでおれ自身の話なのだが、恥ずかしいことに「不可避」という言葉を「ふかへき」と読んでいた。けっこう近年まで。

 これも漢字の部首による覚え違いである。「避」の字はもちろん「ひ」だが、「癖(へき)」などと「辟」の部分が共通なので勘違いしていた。

 ただ、最近まで気がつかなかったということは、あまり耳で聞くことがない言葉なのだろう。幸いなことに(?)口に出した記憶もほとんどない。人前で喋ったりしたら恥をかくところだった。

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