私が推す「マンガの中年男キャラ」ベスト3   | 日本語あれこれ研究室

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 おれが推してやまない、マンガに出てくる三人の中年男キャラ。

 三人とも20年以上前から好きなのだが、ここではデビュー順に紹介する。特に草波はキャリアが長いので、中学時代から半世紀の付き合いだ。

 

 

●草波 勝(望月三起也作『ワイルド7』『新ワイルド7』等)

 

 

 警視庁のキャリア官僚から検事に転身し、「悪党を裁判抜きで退治する超法規的組織ワイルド7」を結成した草波隊長。ワイルドの隊員に対しては非常に冷酷で、あまりにも過酷な死地へ隊員を送り込んだり、時には敵にワイルドを売ったかのような素振りを見せたりするが、飛葉を初めとする部下たちを最終的には絶対的に信頼しているところが推しポイントである。

 

 自らも拷問に耐えたり、部下のために涙を流したこともあるが、そういう一面を部下には悟らせない。むしろワイルドのメンバーからは憎まれることの方が多いのに、その冷静さ・冷酷さを貫く。おれにとっては理想的にカッコいい男である。

 

 例えば『ワイルド7』の「緑の墓」の章。残虐な私設刑務所で拷問を受けている飛葉の元に現れた草波が、飛葉のことなど知らぬと突っ撥ね、立ち去り際には地面から拾った泥を飛葉の口に押し込むのだ。しかし実はその泥には小型火炎放射器が仕込まれていて……。草波の中でもいちばん好きなシーンだ。

 

 

 

●芹沢達也(久部緑郎・河合単作『ラーメン発見伝』『らーめん才遊記』『らーめん再遊記』)

 

 

 ラーメン界のカリスマ。「らあめん清流房」店主兼フードコンサルタント。『発見伝』ではラーメン店開業を目指す藤本浩平を相手に様々な対決を繰り広げ、『才遊記』では部下として雇った汐見ゆとりに苛立ちながらも一目置き、彼女を成長させていく。

 推しポイントは、芹沢が発する言葉には絶対に間違いがないことだ。どんなに意外な言動を見せようが、最後には芹沢が正しかったことが証明される。しかし『発見伝』ラストでは藤本に対して素直に自分の負けを認める潔さもある。

 

 3作目の『再遊記』では一転して人格が変わり(意地悪さは変わらないが)、サウナにハマったりビールの特大ジョッキを一気飲みしたり、実はインスタントラーメンが好きだったり「荒野の少年イサム」を全巻大人買いしたり、あいみょんを聴き始めたりするのである。イサムとあいみょんはおれも大好きだが、キャラ的に芹沢には似合わない。とはいえこんな芹沢もまた好きなんだよな。

 

 一番印象に残るのは、『発見伝』の中の「老舗ラーメン店の謎」。ある古びた流行らないラーメン店で、先代店主の教えを絶対に変えようとしない店員たち。藤本はそれを下町人情だと捉えるのだが、芹沢は言う。「ヤツらはとにかくこのラクな職場を1ミリたりとも変えたくないんだ。先代がどうこうなんて、怠けてる自分達を正当化するための方便にしか過ぎない」

 このエピソードは色々な職業に通じるものがあり、その意味で怖かった。

 

 

 

●文豪先生(北道正幸作『プ~ねこ』)

 

 

 『プ~ねこ』は、様々な準レギュラーキャラたちと猫たちとが活躍したりしなかったりする4コママンガ(近年は4コマではなく数ページものになってきている)。もちろんモコちゃんや白べえや、あと覚えきれないけど好きなキャラはたくさんいるんだが、中でも文豪先生は別格である。

 

 文豪先生は人気小説家ではあるのだが、とにかく仕事が面倒で、原稿は書かないが締め切りと編集者から逃れるための努力なら労を惜しまない大作家だ。小説とアニメとの違いはあれど、常に脚本やらコンテやらの締め切りに追われ続けているおれにとっては、師匠でもあるしお仲間でもあるし、親近感のかたまりのような人だ。

 

 おれは締め切りが近づいた仕事から逃避するために、急に料理を作り始めたり、急に車でホームセンターに行ったりする。文豪先生の場合はバルサンを焚いて仕方なく外出したり、一週間を十日間に分割して表示する時計を特注したり、いいアイデアは風呂で湧くと言って温泉に出かけたりする。

 切羽詰まると『プ~ねこ』の文豪先生のページを探して読んでは「あーこれでいいんだ」と安心しているおれは、しかし仕事をしなければいけないことを心の片隅で自覚しているので、文豪先生のシリーズは実は危険物なのである。

 せめて、文豪先生の世話をしている猫の「書生くん」が、おれにも欲しいです。