An Elegant Evening/George Shearing・Mel Tormé | 風景の音楽

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“のすたるジジイ”が30~50年代を中心にいいかげんなタワゴトを書いております。ノスタルジ万歳、好き勝手道を邁進します。


令和2年12月13日(日)
An Elegant Evening/George Shearing・Mel Tormé(★★★★★)


Side 1

1.I'll Be Seeing You    3:25
2.Moon Medley    (4:12)
 1)Love And The Moon    
 2)Oh, You Crazy Moon    
 3)No Moon At All    
3.After The Waltz Is Over    5:03
4.This Time The Dream's On Me    3:19

5.Last Night, When We Were Young 5:12

Side 2
1.You Changed My Life    2:26
2.Dream Medley    (4:16)
 1)I Had The Craziest Dream
 2)Darn That Dream    

3.Brigg Fair    4:16
4.My Foolish Heart    6:06

5.You're Driving Me Crazy 4:41

George Shearing(p), Mel Tormé(vo)

Recorded May 1985
Released by Concord Jazz ‎– CJ-294(stereo)

どんよりと曇った空だ。
表の道を歩くのは茶色の猫一匹。
ドウダンツツジの葉があらかた落ちてしまった。
秋から陽が当たらなくなるので紅葉は橙色までしか染まらぬ。

それでも今年のサザンカは頑張ってたくさんの花を付けた。
もっと庭に陽光の力が届いてほしいものだ。
薄い雲が陽光を透かして黄色く染まるのはいいものだが、
今朝の雲は陽光を遮って町内は墨絵のように寒々としている。

ジョージ・シアリングとメル・トーメの85年録音。
コンコードのオリジナル盤である。
シュリンクが掛かったままの未開封品である。
先日に聴いた65年のトーメには仰天した。

Popular全開のトンデモ盤でアタシは己の眼力のなさに落胆した。
このアルバムはシアリングとの共演である。
さあ、どうだろうか。
“エレガントな夜”ときたし、85年だぞ…。

おそるおそる針を下ろした。
ああら、いいじゃあないのう。
中低域に厚みのあるくっきりとした録音だ。
さすが85年の録音だ。

コンコードは西海岸のオーディオ・マニアばかりのエンジニア集団で
昔から録音だけは傑出していた。
アタシがコンコードのアルバムに手を出さなかったのは
軽薄な連中のアルバムが多すぎたからだ。

ECMのように薄っぺらではなく
東海岸のような馬力感だけでもなく
充実した中低域を品のよさが支えている。
演奏家さえ間違わねばコンコードはいい盤を作る。

これはシアリングが63歳、トーメが60歳の録音である。
“I'll Be Seeing You”は正に“Velvet Fog Voice”だ。
トーメはベルベットの霧のような声と呼ばれるのを
嫌がっていたそうだが、実際それが彼の魅力なのだ。

このアルバムはグラミー賞のジャズ部門を受賞した。
トーメの歌唱にはシナトラには決して出来ない仄暗さがある。
イタリアの陽光の晴れやかさと輝かしさに満ちたシナトラとは違う。
西海岸に居ても濃霧に包まれるロンドンの匂いがトーメにはある。

60年代のPops路線はトーメの大失敗だったが
シナトラだって同じ失敗をしている。
音楽ビジネスとは実にクダラヌものである。
このシアリングとの共演はトーメの本領発揮だ。

こういうアルバムがあれば85年だからと毛嫌いする必要はない。
新しい年代のものほど録音もカッティングも向上している。
だからといってアタシは新しい年代のVINYLに関心はない。
まぐれあたりはあってもやはりアタシはノスタルジに浸りたい。