Tonal Expressions/Don Shirley | 風景の音楽

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“のすたるジジイ”が30~50年代を中心にいいかげんなタワゴトを書いております。ノスタルジ万歳、好き勝手道を邁進します。


令和2年8月25日(火)
Tonal Expressions/Don Shirley(★★★★☆)


Side 1 
1.I Cover The Waterfront  4:35
2.No Two People  2:00

3.Secret Love  4:05
4.The Man I Love  9:15

5.Love Is Here To Stay  4:05

Side 2
1.Dancing On The Ceiling  5:07
2.They Can't Take That Away From Me  4:15
3.Amswer Me My Love  3:35
4.Medley From "New Faces" 7:00
 a Love Is A Simple Thing
 b I'm In Love With Miss Logan
 c Monotonous
 d Bal Petit Bal
 e Boston beguine

5.My Funny Valentine  3:17

Donald Shirley(p), Richard Davis(b)

Recorded 1955
Released by Cadence  ‎– CLP 1001

今日は旧暦の七夕である。
七夕は月日が決まっているわけではなく
処暑の日に最も近い新月から7日目が七夕の日となる。
だから毎年、七夕の日は移動するのである。

月の満ち欠けにあわせた行事というものはいいね。
天空の星々の運行から日々の諸事を計っていく。
それが本来の姿である。
人智でものごとを決めていく世では根本を見失う。

ドナルド・シャーリイの55年録音。
ケイデンスのオリジナル盤である。
どうしたわけかジャケットと中身が違っている。
ジャケットは“Piano Perspectives”で型番はCLP 1004。

どうやら中身を入れ間違ったようだ。
だが、こちらのアルバムの方がヨロシイ。
ジャケットもはるかに上出来である。
まあ、こういうこともあるからVINYL探しはおもしろい。

シャーリイはもともとクラシックのピアニストである。
18歳でボストン・ポップス・オケでチャイコを演り、
翌年にはロンドン響で自身の曲を演っている。
黒人への差別により、一時は演奏から去ったが数年後に復活した。

これはシャーリイのファースト・アルバムである。
ケイデンスからはJAZZのアルバムを矢継ぎ早に出している。
針を下ろすとまるでドビュッシイのピアノ曲。
これをJAZZと呼ぶべきかはさておいて見事なピアニズムだ。

印象派のピアノ曲のアルバムという雰囲気である。
モノーラル盤にしてはかなり傷みがあって
雨音のようにノイズが混じる。
“No Two People”もまたクラシック風である。

ほんのわずかにラグタイム調のフレーズが入るのがおもしろい。
ベースがピツィカートだったりアルコだったりと忙しそうだ。
ベースが入っていなかったら
クラシックのイージー・リスニング・アルバムだ。

シャーリイはリズムを揺らすのでタイコを抜いたデュオにしたのはよかった。
それにしてもベースでリズムをキープするのは
どうもうまくいかなかったようで
リチャード君、ほとんどアルコで演っている。

60年代にシャーリイは各地でコンサート・ツアーを演っている。
南部へのツアーでは過去の苦い経験から
運転手に白人の用心棒を雇って行った。
この経緯は2018年に“Green Book”という映画になっている。

アカデミー作品賞にもなった映画である。
DVDで観たいとおもったら
まだ新しいせいかずいぶんと値が張るので驚いた。
いずれ、ワウワウで放映されるだろう。