怒り続けると | 満願寺窯 北川八郎

満願寺窯 北川八郎

九州、熊本は阿蘇山の麓、小国町、満願寺窯からお送りするブログです。
北川八郎の日々の想いや情報を発信してまいります。

「光る足」

1999年2月から2000年12月まで百回にわたって毎週火曜日 熊本日日新聞のコラム「ワラブギ談義」の原本を10年ぶりに開きました。当時53才~55才。当時から伝えていることは変わりなく その心を読み返したく連載します。


2000・2・11 no54



怒りや恨みは氷の刃だ。鋭くて人を傷つけるけれど 温かい光の元で必ず溶けてゆく。怒りや恨みを鉄や石の刃に変化させないうちに人の為に祈ろう。子供たちを比較の中で評価せず 個人の歴史の中での成長と変化を認めてあげよう。


私は器づくりの仕事をしている。クリのいがや割れた木を素手で扱うことが多い。少しの油断でトゲが指に刺さる。たった一カ所の小さなトゲで薪も割れず 土もこねられない。私たちの日常は百パーセントの健康で成り立っている。これは奇跡なのだと思っている。怒りとトゲはよく似ている。「小さなトゲは抜き難く 大きなトゲほど抜きやすい。小さな怒りは収まり難く 大きな怒りは去りやすい」


毎日身近に起こる小さな怒りほど難しいものはない。家人に小さな怒りを投げてはいけない。毎日 部下を叱らない方がいい。まず「戒」をもって怒らない日々を過ごしてみる。十日もしないうちに周りの人々が明るくなり 生き生きとしてくる場面に出合う。人と集うことが楽しくなり 春は桜の下で 秋は紅葉に身を染めながら たくさんの笑顔に囲まれて弁当を食べていることになるだろう。

人は怒り続けると 自分の心に罪の意識が生まれる。人を許さずにいると 自分の罪のおできができ その痛みで苦しみ始める。このことに気づいたら 毎日の中で怒りを収め その人によき光を送る練習をしてみるといい。いつか その人とばったり会った時 ニコッとすることを経験する。それが罪のおできが消えた証拠だ。