そうして読んでみると、この憲法にはとても大きな欠点があることが分かるのですが、その反面、戦前の日本人が支配されてきた明治憲法にはなかったものが盛り込まれていることの価値は、明治憲法と対比してみないと浮き彫りにされないということも明らかになりました。
現在の日本に起きている現象や日本が置かれている状況と日本国憲法だけを関連付けて見ていると、偏った結論しか出てこないとも言えるでしょう。
大切なことは、この憲法が掲げている理念を変えるべきかどうかということです。
この理念は日本人が作ったものではありません。と言うよりも、近代憲法というものに対する理念の確立していなかった当時の日本人には作れない憲法だったというのが正しいでしょう。
もし憲法改正を議論したいのならば、条文を云々する前に、政治家たちはまず第一に憲法の主旨たる理念について徹底的に国民にただすべきでしょう。
安倍は憲法とは国家を縛るものであるという考え方を「古い」の一言で切って捨てました。
では、安倍は改憲を提起するのならば、まず第一に、そもそも憲法で国家と国民のどのような関係を規定したいのかを、国民に明らかにするべきでしょう。
憲法とはなにかという本質的な議論を意図的に無視している安倍に、憲法改正を主導させることの危険性は、敗戦後の日本がGHQから明治憲法の改定を迫られたときの比ではありません。