ス-パ-カ-女刑事  第6回 | 芸能界のちょっとだけ、知っていることについて

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ス-パ-カ-女刑事  第6回
野見広子は広尾で輸入代理店を営んでいた。全くの日本人の名前だったが会って見ると彼女は外国人の血が流れている混血だということがわかった。彼女の事務所はマンションの一室を利用していたがそこで話をするのはなんなので近所のイタリヤ料理店に入ることにした。
野見広子が知っている店に行こうということになり、松浦田あややは彼女をデトマソ スピードスターM530の助手席に乗せた。イタリヤ料理店の前にその車を停め、店の中に入ると外に面した席に案内されたのでテーブルに座っても自分の愛車、コルベットスティングレーをミニミニにしたようなその車の姿が見えたので松浦田あややはその車に見守られているような気持ちがした。
「今度、李宗行と結婚することになりましたの。
でも昨日から彼に連絡をとろうと思っているんですが連絡がとれないんですよ」
野見広子はやはり李宗行が殺されたことを知らないようだった。今度も松浦田あややはそのことを彼女に知らせない方がいいのではないかと思い、そのとおりにした。野見広子も長岡文子もどちらも美人だということは共通していたが長岡文子が家庭的な感じがあるのに反して野見広子のほうは派手な美人で、行動的なキャリアガールという印象を受けた。
彼女のやっている輸入代理店はかなりの収入があるらしい。たのみもしないのにそこでの食事の支払いを彼女はしてくれたのだ。
「光速零号といのを知っていらっしゃいませんか。李宗行さんが知っているようなんですが」
「あの人がそんな言葉を言っていたのを聞いたことがあります。あの人は昔、蒸気機関の研究をしていたのを知っていますか。
それからリニアモーターにも興味を持っているらしくて新しく開発された協力な電磁石装置の名称だと思いますよ。
そうだ、今度、彼に会ったらそのことを聞いておきます」
野見広子も光速零号のことについてははっきりしたことは知らないようだった。
そしてその上、李宗行が殺されたことも知らないようだった。
松浦田あややはじいさんのやっている修理工場に戻る前にいつもの喫茶店、オレンジに立ち寄ることにした。
オレンジは外見がスイスの小さな丸太小屋のような喫茶店で、そこには松浦田あややのお気に入り、賀集くんがいる。
ドアをあけると賀集くんがコーヒーをいれているところだった。
あややは初めての経験を賀集くんに上げようと心に決めている。
間違ってもえなり田かずきにはあげないつもりである。店の中に入ると賀集くんがほほえんだ。
「あややさん」
「何だ、来ていたの」
坊主頭の中学生、えなり田かずきもそこにいた。えなり田かずきは賀集くんのいとこにあたっているのだが、何でこんないい男のいとこがえなり田かずきなのか、松浦田あややにもよくわからなかった。
「あややさん、光速零号って、何のことかわかりました」
落語好きの中学生が松浦田あややに聞いてきた。近所でも松浦田あややはボインの淫乱豚と陰で呼ばれみんなが少し距離を置いているのに、何故、この中学生に好かれているのか、それは単純な理由である。
えなり田かずきは性欲に固まっている中学生だからだ。あやのボインと豊満な肉体は中学生にとったてはよだれものである。
「光速零号」
いい男の代表のような賀集くんが聞き返した。
「今度の調査でね。殺された李という人間がそう書かれたノートを持っていたのよ。賀集くん」
「その中身のことはまったくわからない。
でもうちの課長の話によるとその光速零号というのを各国のスパイが追っているという話しなのよ。
それを見つけたらインターポールから表彰されると言っていたのよ」
賀集くんの前で松浦田あややは聞かれもしないことをべらべらとしゃべった。
するとカウンターの向こうにある台所で玉葱を刻んでいたこの喫茶店のマスター、ダンディ坂野田がにゅうとカウンターの中から顔を出した。
「黒い下着のボインちゃんじゃなかった。あややくん、君を訪ねてきた人がいるんだよ。
いつもここにいるって聞いたんで来ました、と言っていたよ。名前はなんだっけ。そうだ。朝永正夫と言っていたっけ」
「あっ、そうだ。俺、言うのを忘れていた。あややちゃん、朝永正夫という人が尋ねて来てあややちゃんがいないから私に話して言ったことがあるの」
「どんなこと賀集くん」
松浦田あややは濡れた唇と瞳で賀集くんの方に顔を向けた。
「野見広子のことについて知っているって言っていたわ。野見広子のそばで働いているんだって。
それで李宗行と野見広子が食事をしていたのを見たことがあるんだけど、
何か、恋人同士でけんかをしていたみたいなんだって。野見広子がさかんにたのみごとをしているみたいなんだけど
李宗行が首を縦に振らないでそのうち野見広子が腹を立てて店を出て行ったんだって、自分の見学談を話していたよ」
朝永正夫という人物、どこで松浦田あややが野見広子のところに話を聞きに行ったことを知っていたのだろうか。あのイタリヤ料理店でふたりが話しているのを見ていたのかも知れない。そしてあややが私立探偵か何かだと思ったのかも知れない。朝永正夫が見たという痴話喧嘩、それはなんだろうか。
二人は結婚の問題でもめていたのだろうか。そのことがもつれて李宗行が野見広子に
殺されたということはあり得ないだろうか。でも朝永正夫はなぜわざわざ自分のいる場所をしらべてまで訪ねてきたのだろうか。そのとき喫茶オレンジの電話がけたたましくなり始めた。
松浦田あややはあわてて電話を取った。
「もしもし、喫茶、オレンジですか。今日、松浦田あややさんを尋ねた者なんですが、助けてください。殺されます」
電話の主の声は切迫していた。
「朝永正夫さんですか。私が松浦田あややです」
「早く、助けに来てください。うわー」
「携帯電話なんでしょう。電話の電源を切らないように」
松浦田あややはあわてて外に飛び出した。
「あやさん、待ってください。僕も行きます」
えなり田かずきも松浦田あややのあとを追って外に飛び出した。外にはデトマソ スピードスターM530が停まっている。
二人がその車のところに駆けつけるとドアは自動的に開いた。
松浦田あややはシートに身体を滑り込ませるとこの車に搭載されているコンピューターに向かって話しかけた。
助手席にはえなり田かずきも座っている。
「喫茶オレンジにかかっている電話の発信地へ向かうのよ」
メータークラスターについている表示板に自動操縦の赤いインディケーターが点灯した。
後輪がきしむ音を立て、デトマソ スピードスターM530は発進する。1000CCの単車の加速性能も越える車である。
あっと言う間に時速三百キロの壁を越えた。自動操縦に切り替えたこの車はどんなラリーの優勝者の運転技術よりも正確にその携帯電話の発信源に向かって行った。
「どこへ行くんですか」
「車に聞いてちょうだいよ」
「なんか、晴海埠頭に行くような気がするんですが」
「そうかも知れないわ」
デトマソ スピードスターM530は晴海埠頭に入るやいなや、急カーブを切り、ジヤンプをした。
そしてそのジャンプの先にあるものは。高さが五メートルを越えるゴリラのようなもの、
いや、ゴリラなら全身が毛に覆われているに違いない。それは全身が暗く青光りしている怪物だった。
キングコングを金属で作ったらこんなものになるだろう。デトマソ スピードスターM530は三十メートルもジャンプしてその怪物に体当たりをする。その怪物のそばに男性の姿がある。
あれが朝永正夫だろうか。恐怖で表情が固まったまま腰を抜かしているようだった。
デトマソ スピードスターM530はその怪物を倒すとうまく着地をした。
そしてまた怪物は立ち上がろうとする。デトマソ スピードスターM530はまた着地した位置から急カーブを切ると立ち上がろうとしている怪物に向かってジャンプをした。
すると金属性の怪物はデトマソ スピードスターM530にはじき飛ばされた。
「ちょっと待って、あの男性を救うのがさきだわよ」
デトマソ スピードスターM530の自動操縦を解除して松浦田あややがドアを開けその男性を助けに向かおうとすると、怪物はまたむっくりと起きあがった。
「あややさん、怪物がまた起きあがっちゃいましたよ」
「仕方ないわ」
あややはあせった。
松浦田あややはあわてて再びデトマソ スピードスターM530の自動操縦のスイッチを入れた。
怪物は起きあがってこちらに向かって歩いて来ようとしている。
今度はデトマソ スピードスターM530はジャンプをしなかった。またものすごい加速をくわえ、その怪物に向かって行った。今度はその車を怪物は受け止めた。デトマソ スピードスターM530に内蔵されているコンピューターの判断を予測すればこの怪物が立ち上がったものの、海のそばにいるのでこのまま海の中に押し出そうという判断らしかった。デトマソ スピードスターM530はその怪物にぶっかって行った。
二千三百馬力のエンジンがきしんだ。それを持ちこたえているということはこの怪物もそれだけの動力性能を持っているということか。そのとき空中から空気を切り裂くプロペラ音が聞こえる。
怪物と四つに組んでいるこの車の運転席から松浦田あややが頭上を見上げると軍用の戦車を運ぶことのできる巨大ヘリコプターが下りて来る。ヘリコプターから光りの破線が走った。
ヘリコプターは機銃掃射を空中から行ってきた。
デトマソ スピードスターM530の上に突然の雹が落ちて来たようだった。
しかしデトマソ スピードスターM530のフロントガラスもそのボディも対戦車ヘリコプター、アパッチの十倍以上の強度を誇っている。機銃掃射ぐらいではびくともしない。
「ふん、あややちゃんの車はそんなものではびくともしないわよ」
松浦田あややがたかをくくっていると後ろの方で機銃の掃射音と同時に人の叫び声が聞こえる。ドアミラーを見ると人が倒れている。
今の機銃掃射で松浦田あややを尋ねて来た朝永正夫が撃たれたのだ。松浦田あややはデトマソ スピードスターM530の自動操縦を解除してバックした、倒れている死体のそばに行くが全く動こうとしない。
そのすきに巨大ヘリコプターからクレーンが降ろされ、怪物はするすると空中に上がって行った。
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