オープン戦が休みでも
岡田監督がいろいろゆうて
くれるから記者はありがたい
やろうなぁ。
記事はサンスポから。
【元虎番キャップ・稲見誠の話】阪神・岡田彰布監督が掲げる年輪刻んだ〝眼力ベースボール〟
データ重視の現代野球は「コーチとかいらんやんか」時代に逆行する挑戦始まる
こういう反応だと、何となく自信があった。そして答えは、ほぼ正解? 31日の開幕戦(京セラ)で激突するDeNAの先発が左腕の石田健大に決まったのは17日のこと。一夜明け、阪神はヤクルトとのオープン戦が降雨中止。報道陣に囲まれた岡田監督は感想を問われた。反応は「ああそう、おーん。誰でも別に一緒や。誰でもエエわ、別に」だった。強がりではない。今永昇太がWBC日本代表に選ばれ、開幕投手候補と言われた大貫晋一が右肩の負傷で戦列を離れた。浜口遥大との二択。オープン戦でのローテを考えれば予想通りの人選。昨季、先発左腕にコテンパンにやられた苦い歴史も、岡田監督には関係ない。独特の表現で「コーチ不要論」を持ち出して、昨今のデータ重視野球に、歯向かうかのように口を開いた。
石田の昨年の阪神戦成績は4試合に登板し、3勝無敗で防御率は1・11。それでも「俺知らん全然。去年のことなんか何も知らんよ。誰が打ってたか、誰が抑えられてた、相性悪かったとか、全然見てへん。そんなん見たら選手使われへんやんか」。向こうの狙いは手に取るようにわかる。68勝71敗4分に終わった昨年の対先発左腕試合は22勝32敗。右腕だと46勝39敗4分。悪夢の開幕9連敗、市外局番並みの勝率…から、最終的に3位まで巻き返したものの、左腕アレルギーは払拭できなかった。10連敗を喫するなど、相手にしてみれば「阪神=先発左腕」が勝利の方程式だった。
昨年7勝に終わった石田は阪神から3勝をゲット。その他、6勝止まりだったヤクルト・石川は2勝無敗で防御率1・08。8勝の中日・大野雄は7試合に登板し、3勝1敗で防御率1・71。サウスポーにとって〝阪神銀行〟だった。巨人に14勝10敗1分と勝ち越した理由は、相手に左腕先発が少なかったから。岡田監督も知っている。でもそれは2022年のタイガース。今季は自軍も他球団も全く違う。「俺は一切去年のことなんか思てないよ」。オカダ野球の一端だった。
元々、〝相性野球〟を好まない。日替わり打線を組んだ前任者との大きな違いだ。だから昨今のデータ重視の風潮に言いたいことが山ほどある。球場に設置されている「トラックマン」や「ホークアイ」。ボールの回転数やスイングスピードなどを計測し、プレーに生かす。投手がブルペンでの投球を中断し、データに目を通す光景も多々見られる。数値を追いかけ、過去の傾向からプレーを選択するのなら「コーチとかいらんやんか。そう思わへん? 感性を持たなアカン。ゲームの中のな」が、この人の持論。データを軽視するわけではない。「頭の中に入れるけど、使うかどうかはわからん」と語っている通り、目に見えないモノ、数値で表れないモノに興味や関心を示し、最後は自分で判断する〝眼力〟が必要だというわけ。
「守っているもんが一番分かるよ。今日のバッターのスイングの調子とか、うちのピッチャーのボールのキレとかな。そういう感性を選手も持たんと野球も、うまならへんよ。データの『こっち方向やから、はい、こっちだけ守ります』だけではなあ」
数値化に成功し、正確なデータを弾き出して、明確に選手に伝える。分析と表現能力に長けた最先端を走り、実績を残す指導者にしてみれば、この考えは古いと感じるはず。だから…と次に言葉をつなげたいと思うはず。ただ過去の対戦成績を完全にインプットして、それを元に打順を組むのなら、極端に言えばコーチは不要という岡田監督の考え方に、個人的には親近感を覚える。記憶力だけでは勝てない。気配を察知する予知能力を磨いて、鍛えることを求める。
「年かわったら、また違うもんやろ。やっぱり気持ち的にもちゃうし、チームもかわったし、いろんな意味で、メンバーも、かわってるわけやからな」とさらに続けた。そう言い切るだけの手は打ってきた。常に試合に出続けている右打者は大山だけだった昨年とは違って、2人の右打者を揃えた。森下が加入し、腰の張りを訴えていたノイジーも、ここに来て、本来の実力を出しつつある。誤算もある。目に見えないアクシデントもあったはず。それでもドッシリ構える。
阪神の先発は予想通り、プロ8年目で初の大役を射止めた青柳に決まった。対する石田は17、18年に続いて3度目の開幕投手。DeNAだけではなく、他球団も阪神に先発左腕をぶつけてくるのは目に見えている。巨人は新外国人左腕のフォスター・グリフィンがオープン戦を快調に飛ばしている。サウスポー包囲網を岡田監督がブチ破ることができれば、18年ぶりの頂点に近づける。何よりデータ分析に基づく〝机上の野球〟を打破できれば、尚更、価値も上がる。開幕まで2週間を切った。諸刃の剣とも言えなくはない現代野球への挑戦。数字より刻まれた年輪が上回ってほしいと願う。こんなカッコいいセ界制覇はない。
■稲見 誠(いなみ まこと) 1963年、大阪・東大阪市生まれ。89年に大阪サンスポに入社。大相撲などアマチュアスポーツを担当し、2001年から阪神キャップ。03年、18年ぶりのリーグ優勝を経験した。現在は大阪サンケイスポーツ企画委員。