荒野の古本屋
兵庫県伊丹市にブックランドフレンズ という素敵な本屋さんがある。JR伊丹駅を降りて1~2分の場所。
そこの店主は通称「こんぶ」といい、お客さんから親しみをこめて「こんぶさん」と呼ばれている。
その本屋さんで昨日、晶文社刊の「荒野の古本屋」というエッセイにかなり近い私小説を買った。
梅田に宿をとり、今朝は曇り空の大阪で朝を迎え、ホテル横のスターバックスでドリップ珈琲を飲みながら「荒野の古本屋」をパラパラめくっていた。
その書中に東京の電車のことが書かれていて、新宿駅の手前で中央線や埼京線が山手線と並走する瞬間があるというくだりがあった。
そこから文書は発展し、詩人萩原朔太郎(はぎわら さくたろう)の随筆「汽車の中で」へ向かった。
その随筆にはこう書かれているらしい。(らしい~というのは私自身は読んでいないからだが……)要約して書く。「同じ速度で並走する列車に乗っている時、ふと、タラップから隣の電車に乗り移りたくなる。だが、その誘惑の衝動を感ずるとき、実はぞっとする。なぜなら片足を移した瞬間、並走するどちらかの列車が速度を変えたらどうなるのか。人間の運命とチャンスについて、つねに同じことを考えて戦慄する」と。
この「荒野の古本屋」著者は森岡督行(もりおか よしゆき)40才の作。(現在41才)その著者が百年以上前に生まれた詩人に言及する凄さに感動した。真の読書家とはこういう人間なのだと。著者自身が原著の中で云っている「読書と散歩が趣味」と。
そして、その百年前の詩人の随筆の思考にも打たれた。最後の一行にある、「人間の運命とチャンスについて、つねに同じことを考えて戦慄する」との思考。
まさに運命における両足で立つまでの不安定さをここまで上手に表現した文書を私は読んだことがなかったからだ。
そして最後に、ブックランドフレンズ の選書の上手さに感動した。なかなかこんな本を置いている本屋はない。フレンズではこの本を平積みにしているのだ。
中村信仁