お前が大きくなったら
毎年、誕生日が来たら一年分のことを日記にしよう。
20回目の誕生日には、成長の記録としてその日記を本人にプレゼントしよう。
成人を迎える誕生日に高価な腕時計をプレゼントして「これからの時を大切に刻んで」といおう。
その日は二人で食事をして「怪我や大病もなく元気に今日を迎えられたことに乾杯」しよう。
本人が生まれることになった親の馴れ初めを話して聞かせてあげよう。
昔、色々なことを考えていた。
こうしよう・・・ああしよう・・・。
だけど、子育てをしながら生きるということは、考えていた以上に大変だった。商売に追われ、金策に走り回り、世間に頭を下げ、仲間に裏切られ・・・。
そして、その日を迎えたとき、ひとつだけ実現できた。
一緒に食事をすること。
その時思った。
世間もなかなか捨てたもんじゃないと。
全部、今日のための必然だったことを娘に伝えた。
善いことも大切な経験だけど、辛いことはもっと大切な経験だった。
商売に追われたお陰で信頼してくれるたくさんの仲間を得た。
金策に走り回ったお陰で身の丈を知ることができた。
世間に頭を下げてきたお陰で謙虚であることの意義を知った。
仲間に裏切られたお陰で人としての優しさを学んだ。
何ひとつ思い通りに歩けなかったけど、全部大切な経験となり素晴らしい思い出であることを伝えた。そして、まわり道だと感じた出来事が、すべて自分の思いを叶える正しき道だったと。
明日へ希望を持って、信じる勇気を持って、巣立ってください。
親業を終了する日が近づいていることを感じます。
中村信仁