この数日
見えない何かが動いていて
残す気になった…


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小学校の6年生の時だったと思う。

週に1度月曜日に全校集会があった。

体育館にはエレクトーンがあって集会の時にそれはよく活躍していた。

 

ピアノを習っている子は周りにいたけれど、エレクトーンを習っていたのは私しかいなかったのと、児童会という役でもしていたのかよく弾かせてもらっていた。

 

 

 

ある時、校長先生がその集会でアカペラで『大きな歌』というのを歌いだした。


急に伴奏をつけろと言われた気がする。


先生が歌われるのを耳で聴いて旋律はまだしもその上コードをつけて弾くなんて・・・。

2,3回歌われたが最後までコードが分からない箇所があった。

それでも普段鍵盤と戯れていたからごにょごにょなりにできた技だったと思う。


できなかったところが気持ち悪くて自分だけが感じた挫折。



 

 「今度全員で歌うで弾いてきて!」

校長先生はそう言われた。

 

 

 家に帰って探りながら弾いた。


5線ノートを出して取り合えずメロディを書き、コードを書いていった。

色々試してはっきりしなかった箇所に合うコードが見つかった。


嬉しかった。

準備はできた。

 

次の集会の日がやったきた。


『大きな歌』を校長先生と全校が歌った。


今度はちゃんと弾けた!

その歌のコーナーが終わる時、校長先生が


「○○はこうやって準備してみんなの為にやってくれとる」


って、私が見ていた5線ノートを手に取り、高く掲げて全校の皆に話して下さった。

 

褒めてもらおうとか思ってやっていた訳ではなかったけど、前回の分からなかった自分への悔しさ、家で楽譜を書き、コードを探し当てるまでの格闘と見つかった時の喜び、それら全ての時間が報われたようで涙が溢れてきた。


でも人に気付かれるのはなんだか嫌でこぼれないように必死で堪えた。

 



今思えば、『大きな歌』なんて基本的なコードしか使われてなくて笑えてしまうけど、当時の自分としては、和音進行とかコードのことも習ったことがなく、ただ既成の楽譜を弾くだけしかやっていなかったので、本当に手探りの作業だった。

でもこれも音楽に向き合ういい経験だったと思う。