アーセナル1−0マンチェスターシティ
シティのSYSTEM
選手交代:アルバレス→ドク、リコ・ルイス→ストーンズ、コヴァチッチ→ヌニェス
アーセナルのSYSTEM
選手交代:トロサール→マルティネッリ、ジンチェンコ→冨安、エンケティア→ハヴァーツ、ジョルジーニョ→トーマス
得点者:86分マルティネッリ
序盤戦の天王山アーセナルvsマンチェスターシティ。今季もこの両チームが優勝争いをすると思われ第8節で早くも第1ラウンド開始。
で、早速レビュー
シティがこれまでと違ったのはアンカーにベルナルド・シウバを起用したことだろう。本来であればロドリ不在の場合カルヴィン・フィリップスを代役で使うのがベターであるがまだグアルディオラの信頼を勝ち取っていないのが分かる。攻撃志向が強いヌニェス、コヴァチッチのCMFでは守備時に劣勢になるやろうしそこでボールを運べる、繋げる、スペースを埋めれる攻守の汗かき役屋ベルナルド・シウバがアンカーに抜擢されたわけだ。ビルドアップ時は右ウォーカー、左グヴァルディオルのSBは大外レーンへと開いて幅取りするので左にプレスの逃げ道としてパスコースを確保する為に3バック左には左IHコヴァチッチが下りてくるしルベン・ディアス、アケの2CBを左右に開かしてアンカーのベルナルド・シウバを中央に下げさたり3バックを維持する。シティ、アーセナルに通ずるのは立ち位置でピン留めすることでできる数的優位と位置的優位によるスペースを作るメカニズムである。まずアーセナルから見ていくと序盤から左SBジンチェンコはインサイドでなく左の大外レーンに張らしていて左WGトロサールが内側へと絞っていた。この駆け引きというのは右SH起用のアルバレスがボールを保持する左CBガブリエウに前からプレスをかけにいく、中盤ではシティ、アーセナルとも3vs3の状況、左サイドに張るジンチェンコは右SBウォーカーを立ち位置でピン留めすることによりインサイドに絞っているトロサールが浮く形となりフリーでボールを受けれるようになるのだ。アーセナルはビルドアップで前からのプレスを誘い出して大外と内側の立ち位置で数的優位を作りシティの守備に迷いを生じさせる。大外に開くジンチェンコと内側に絞るトロサールの立ち位置の狙いはこうしたとこにある。
3トップは右からジェズス、エンケティア、トロサール。3トップがPAに収まるような形となればシティの4バックは内側へと引っ張られるので縮小されるから右の大外のスペースに右SBホワイトが攻撃参加してくる。右サイドからの攻撃でシティと類似してるのはジェズス、ウーデゴール、ホワイトのトライアングルが数的同数で塞がれても背後で+1をもたらすジョルジーニョに戻してそこから最終ライン裏へと浮き球パスを入れてジェズスが裏で受ける。ここジョルジーニョに戻しパスを入れる時にシティは体の向きと視野がボールサイドへと引っ張られると裏抜けのアクションをするジェズスへのケアが曖昧となるわけだ。
次はシティを見ていくとビルドアップに対してアーセナルは連動したハイプレスで追い込みをかけてくる。左右に開くCBの間へ下りるアンカーのベルナルド・シウバの立ち位置にもよるがライスが前へとプレスに出て牽制をかけてくる。ここでポイントとなるのが立ち位置で守備の迷いを生じさせるポジショナルプレーと出口の確保だろう。まず左サイドからの出口の作り方はアケとグヴァルディオルがアーセナルのジェズスとホワイトの連動したプレスを受けると前方に左WGフォーデンが下りてパスコースを作り出口を確保する。ここフォーデンにボールが入ってゾーン1を突破するとジョルジーニョがスペースカバーで対応していたがフォーデンが出口となったのも左に開くアケがビルドアップに加わったので右WGジェズスがアケにプレスをかけにいくのでここで守備のズレが生まれフォーデンがフリーとなったのだ。本来はSYSTEMの構造上WG−SBで2vs2になるのだがCBがサイドに開くことでボールサイドで3vs2を作り出せる仕組み。左から右を使ってプレス網を剥がすメカニズムは左サイドをオーバーロードでアーセナルのプレスを引き付ける。ここ足元の技術があるフォーデンとコヴァチッチが左サイドにいることでこの2枚のボール回しからプレス網を剥がして一度右CBルベン・ディアスを経由して右の大外レーンでフリーのウォーカーを使いゾーン1からゾーン2へと突破する。ウォーカーがフリーでボールを受けれるのもアーセナルがシティの左サイドに守備の枚数をかけていた為にオーバーロードからアイソレーションでフリーな状況を作れている右サイドを使う。
次はリコ・ルイスの立ち位置により生み出される優位性であるがポゼッション時リコ・ルイスの立ち位置がライスをピン留めすることによりベルナルド・シウバをフリーにできる。このゾーンで2vs1の数的優位を作れていることになる。懸念されるのはシティの配置はWGのアルバレス、フォーデンが中へと入る位置取りが多く大外のスペースはSBが使う。前半から中央に枚数を集めてサイドはSBの攻撃参加で攻める形。左サイドはフォーデンが内側へと絞ってギャップを作る動きから左サイドを攻め上がる左SBグヴァルディオルを使う攻撃はあったが総合的に見てユニットによる崩しが少なくサイドは常にSB1枚で攻撃に閉塞感が漂う。ハーランドへも良いボールを届けれなかった。チャンスだったのはビルドアップ時に+1をもたらすGKエデルソンのロングフィードからハーランドという攻撃ルート。そこからハーランドの深さを作る動きからシャドー的な役割を担うアルバレスがスペースで受けようとする。ハーランドのシュートチャンスは殆どなかったが深さを作る動きからシャドーのアルバレスやフォーデンを使う狙いがあったのでWG起用だったのだろう。
シティの守備面では右IHリコ・ルイスを前へと押し上げてハーランドと前線2枚を並べて442ゾーンを結成し中盤のコヴァチッチなどがアーセナルのCMFをハメ込みハーフコートマンツーでビルドアップを抑えにいく。アーセナルはビルドアップ時ライスが最終ラインへ下がることがあるので最終ライン4枚でビルドアップを敢行する。
シティ、アーセナルともハイプレスでハメにいく守備スタンスがあるが後半アーセナルは少し変化があった。前半左サイド(アーセナル側から見て右サイド)でフォーデンに出口を作られフリーにしてしまう数的優位を作られたのでアーセナルもボール非保持時442となるが2トップ気味のウーデゴールがアケがボールを持てば寄せにいくことで前半のような守備のズレを防ぐ狙いが見て取れた。アーセナルはハイプレスと442の守備ブロックを作ってスペースを埋めるリトリートを使い分ける。リトリートでスペースを埋められた時はシティは攻めあぐねる。なので後半途中からドクを左サイドに起用し縦の突破から打開したかったのだろう。ヌニェス起用は中盤からダイナミズムをもたらしボールを運べるからだろう。
アーセナルは後半途中ハヴァーツ、冨安、トーマスを同時起用。この交代策が奏功する。冨安が左SBに入ったことでマルティネッリが内側、冨安が大外に張るポジション移動でシティの守備を揺さぶろうとする。冨安がワイドに開くことでフォーデンを下げて5バック気味になることも。そうなると重心を下げたことになるので前への圧力も半減する。86分には交代選手4人が絡んで決勝ゴールを決められる。トーマスのロングパスからボックスに入ってきた冨安が頭で落とすとハヴァーツがDFに寄せられながらもキープから落として最後はマルティネッリ。シュートはアケに当たってコースが変わりそのままゴールに吸い込まれる。
そんな感じでシティ連敗。しかも首位陥落で3位まで順位が下がる。負けたとはいえ戦術がぶつかりあっていたし見応えがある試合だった。
次節はブライトン戦