すごい本だった、、。
前回エッセイ集を読んでから、今回は小説を読んでみたいと思って借りてきた「とわの庭」
可愛らしい装飾の本で、ほんわかとしたお話なのかと思っていました。
盲目の娘「とわ(永遠)」と母の「愛」
二人きりで暮らす家には庭からの花の香り、黒歌鳥合唱団、友達とあてがわれた人形ローズマリー、一週間に一度オットさんから玄関前に届けられる荷物。
とわは目が見えないため、日にちの感覚をもてるのは水曜日に来てくれるオットさんの存在のみ。
物語はじめは、母からの愛情を受けて幸せに過ごしているのだが、、
生活のために母が働きに出たあたりから不穏な空気が出始める。
外の世界との交流を一昨禁じられているとわは、自分の世界には母一人しかいない。
いつの間にか壊れてしまった母はネグレクトとなり、家に帰ってくる事は無く、とわは一人ゴミ屋敷で何年も過ごす事に。
とわは一人、母を待ちながら、時間を持たず空腹と戦い、汚い家の中で自分の爪を食べてでも生きて行く。
パンケーキを幸せそうに頬張っていた物語前半からは想像できない壮絶な展開。
母と自分は「とわのあい」で結ばれていない事に気づいた主人公は自分の足でゴミ屋敷を出る。
その後児童養護施設に保護され、厳しく温かい訓練を受け自立して行く。
盲導犬ジョイとの出会いで世界は広がり、友人達や恋人もできる。
人々との交流の中で、たくさんの事を知り、感謝をし、成長していく主人公。
目は見えないとわは光を感じる。
ラストは本当に光と希望に満ちていた。
視覚障害を持つ人の感覚(聴覚、嗅覚)の描かれ方、ネグレクトを受けた人が持つ精神的な不安と身体。
描写がすごかった。
淡々と描いているように見えるが、壮絶。
小川さんは以前エッセイで母親との確執も書いていたから、自分自身の体験も振り絞って書いたのではないかしら。
言葉の選び方や文章の書き方で、読む人を物語の中へ自然に引き込ませる。
小説を書くってすごい事だ。
改めてそう感じた。
主人公の希望に満ちた結末に拍手をおくりたくなる。
自分の心にも希望を持てるような気持ちになれた。
素晴らしい本でした。