数少ない、読者の方には、ご心配を
お掛けいたしました。
突然ですが、立川談志師匠が手掛けた「小猿七之助」に
勝手に下げをつけました。
今年の始めに書いて、ある落語家さんに
提案したものです。
半年経過したので披露させて頂きますが、
面白くないと思います。
しかし、いつか必要とする方が現れることを願い、
書きしたためます。
お滝を殺そうとする、七之助。
命乞いをして七之助を口説くお滝。
お滝 ーー「待っておくれよ、七さん」
七之助 ー「いや、駄目だ、あきらめてくれ」
お滝 ーー「いやいや、未練じゃないよ、未練じゃないんだよ。
あたしはねえ、惚れた男に、もう、これ以上、
罪を重ねさせたくないんだよ」
七之助 -「えっ?」 (七之助の顔つきが変わる)
お滝 --「せめて、せめて、
自分であの世へ行かせておくれよ。
だから、その匕首(あいくち)をこっちへお渡しよ」
七之助 -「うーん、そんなことをしたら、お前がおれを・・・」
お滝 --「何を言ってるんだい、あんたも、小猿七之助と言われた
男だ。
たとえ、あたしが、その匕首を持って、あんたに
立ち向かったとしても、どうなるんだい。
そんな下手を打つような、七之助じゃないだろう」
七之助 -「うーん・・・」
お滝 ーー「さあ・・・」
七之助 -「うー・・・」
お滝 --「七之助さん、さあ・・・」
七之助 -「うーん良し、分かった滝川さん、ほれ・・・」
お滝 --「ああー・・・(大きな溜め息) 嬉しいねえ。
最後に信じてもらえたとは、ねえ・・・、
それに、あたしのことを滝川さんと呼んでくれるとは、
なんて因果なんだろうねえ・・・」
七之助 -「因果・・・?」
お滝 --「ああ、そうだよ、これが因果じゃなくて何なんだい。
あんたも知っての通り、
あたしが、お滝と呼ばれるようになった所以は,
昔、奥女中だった頃の名が滝川だったからだけど、
その滝川はね、大好きな崇徳院さんの歌の中から
戴いたものなんだよ」
七之助 -「崇徳院・・・?」
お滝 --「瀬をはやみ・・・」
七之助 -「おう、瀬をはやみ・・・か」
お滝 --「瀬をはやみ、岩にせかるる滝川の割れても
末に逢わんとぞ思う」
七之助 -「おうおう、瀬をはやみ岩にせかるる、滝川のか・・・」
お滝 --「われても末に逢わんとぞ思う、
今は別れる運命でも、いつかまた、逢いたい、という歌さ・・・」
七之助 -「うん! うううーん・・・」
お滝 --「いいかい、七さん!
自分でいくのがせめてもの救いだ、
(両手で握った匕首(扇子)の切っ先を自分の首に向けて)
割れても末に逢わんとぞ思う、
七さん、あの世で待ってるよお!」
七之助 -「待てえーっ、お滝、いや、滝川 !」
と、七之助が叫ぶと同時に、舟の灯りが、ふっと消えます。
その後は、真っ暗、
その暗闇の中,ふたりを乗せた舟が、
ゆらっ・・・、ゆら、ゆらと、三度、揺れたんでございます。
そして、その後は、何事も無かったように、
すべてが、夜の無言(しじま)の中に呑み込まれてしまいます。
漂いて、行方定めぬ宮戸川
(ただよいて、ゆくえさだめぬみやとがわ)
浮いて極楽 沈んで地獄
はたまた、死んでも地獄、生きても地獄の運命か・・・?
てなことで、小猿七之助、滝川、永代橋の段でした。
えーっ おまけでございます。
これは噂ではございますが、噂ですよ。
この後、滝川は死なずにすんだのでございますが、
七之助とは所帯を持たず、
何やら、大物の政治家の二代目のところへ嫁いだ、
との話も、ちらほらと・・・、
滝川も、元はと言えば、小さな泉、小泉・・・、
なんて、珍説で失礼をいたしました。
深礼
歌舞伎の「網模様灯籠菊桐」も、
講談も異様な内容なので、
ちょいと、まろやかな下げにしてみました。
不悪 !
朝馬座 主席及び末席 脚本担当
真波 連路