こんにちは。
前回のブログでは、アンジェイ・ヤシンスキ(Andrzej Jasiński)氏による『4つのマズルカ作品24』の公開レッスンをご紹介しました。
言葉が全く分からなかったので、『マズルカ』の解釈をお話しされているのだろうと思われる場面がありましたが、何となくでしか分かりませんでした。
こちらのインタビューで、『マズルカ』の解釈をもっとお話しされていたので、和訳してみました。
ヤシンスキ氏は、ポーランドのピアニストで、ショパン・コンクールの審査員を長く勤められています。
2000年、2005年、2010年は審査員長。
クリスチャン・ツィメルマンの先生だったそうです。
現在は、フレデリックショパン音楽アカデミーとカトヴィツェ音楽大学の名誉教授。
マズルカを得意とされるそうです。
このインタビューは、2016年の第17回ショパン・コンクールの第3ステージの最中に撮影されました。
その(5:54)からです。
司会者:『マズルカ』についてお話がありました。現在はコンクールの第3ステージで、大変高度なレベルが要求されます。近年『マズルカ』の弾き方を知るピアニストがどんどん減ってきていると言われていますが、どう思われますか?
ヤシンスキ:ある意味そうですね。現在11人の出場者を聞きました。その中で私が『マズルカ』に満足できたのは2人です。残りの人達は、大げさな表現で弾いたり、必要以上に強弱の差やアゴーギグをつけたり、自分よがりの感情や想像を入れ込んだり、逆に、硬く、書かれた通りに弾きすぎて柔軟性がない人もいました。
『マズルカ』はダンスの要素があります。ダンスの「ホップ」、『マズルカ』の中ではそれが右手に現れる事を理解して下さい。左手ではありません。(左手は)コントラバスがこんな風に演奏している様子です。そして、右手がジャンプします。左手はジャンプしません。でも左手をジャンプさせる人が多くいて残念です。このイメージを持たないで弾くのは間違いです。
司:最近このダンスを踊る事もなくなってきました。
ヤ:そうですね、でもテレビなどで色々な種類のダンスを見る事ができるし、それらを想像する事はできます。ボレロもショパンの曲に影響しているし、タランテラもそうですね。ショパンの『マズルカ』には時々メヌエットやワルツの要素もあります。このような様々なダンスを知っていると、音楽作りに大変役立ちます。
話は戻りますが、『マズルカ』には2つの要素があります。「ダンス」と「表現」。感情のニュアンスや人の悲哀などが分からないと、『マズルカ』は表面的な演奏になります。
ショパンは懐かしい思い出に笑顔になり、それがもう戻らないことに涙し、冗談も言うし、歓喜の気持ちも持つ。『マズルカ』の中で、彼は時には立ち上がって「私はポーランド人だ!ポーランド魂を見せてやる!」と言っている時もあります。これらが理解され、感じられると内容が伴う演奏となります。
司:演奏者の中には『マズルカ作品56』『マズルカ作品59』など後期の作品を選ぶ人達がいますが、舞曲的な要素より、旋律的で幻想曲的な要素の方が増すように思うのですがいかがでしょうか?
ヤ:確かにそうですね。後期『マズルカ』は心の表現の要素が増えますね。長調の曲は過去の良い思い出を懐かしむと同時に、遠のいた思い出に対してノスタルジックな気持ちになっている。懐かしく美しい自然、友達、家族、そしてポーランドが自由だった頃。それらが全部入っていて、現代においてもそれが言葉なしで後世に伝えられるという事は素晴らしい事だと思います。
司:第3ステージで続けてそのような演奏が聞けるのを楽しみにしています。今日のゲストはアンジェイ・ヤシンスキ先生でした。ありがとうございました。
次回はこのインタビューの前半をお届けします。