今日はピアノの【オーディション用の選曲】について書きたいと思います。
アメリカの大学、大学院の音楽学部では入試実技試験(オーディション)の成功が高額奨学金(スカラシップ)の鍵になるので、早いうちから必要な曲をレパートリーとして積み上げ、しっかり準備して下さい。
ライブ・オーディションでも、ビデオ・オーディションでも、先生方が審査に使う時間は15〜20分です。その間に自分のベストが発揮できる曲を選びます。
試験曲の選び方はいくつか方法がありますが、私と生徒達はだいたい以下のように選びます。
- 行きたい学校の試験曲を調べる。
- メインとなる曲を選ぶ
- メインの曲との組み合わせで他の曲を選ぶ
- 違う調
- 違うテンポ
- 違う表現やテクニック
メインの曲
- 一番自信がある曲
- 最初の2分以内に聞かせどころがある曲(主にテクニック的に)
- 例えば、リストのハンガリアン・ラプソディー、スクリアビンのソナタ4番などは始めの遅い部分で止められたり、次の曲に飛ばされてしまう場合があるので、避けた方が良いと思います。
- ライブの場合は、最初に弾くことを想定
- 知らないピアノでも動じずに、またリスクが少なく弾ける曲
- 例えばラベルの「道化師の朝の歌」は連打がリスク・ファクターになるので、どうしても弾きたければ、1曲目にしない事を勧めます。
その他の選曲の注意点
- 自信がある曲だけで揃えられない場合は、自分の弱さを見せない曲を選ぶ。
- 特に始めの3分以内に弱さが見える曲は避ける
- バッハ平均律
- 審査の観点は
- 暗譜力
- フーガの理解とそれを反映した演奏
- プレリュードとフーガの関係性(類似、対比など)の表現力
- プレリュードで繰り返しが続く曲は避ける
- 1巻より2巻の方が好まれる傾向がある
- 審査の観点は
- 古典派ソナタ
- Undergraduate の場合は、「一楽章(アレグロ楽章)だけ」という学校と、「全楽章」という学校がある。
- 「一楽章だけ」と書いてあっても、全楽章準備した方が好印象、奨学金増の可能性。
- 審査の観点は
- ソナタ形式の理解とそれを反映した演奏。
- 忠実な譜読みを反映した演奏
- 基本的なテクニック(スケール練習不足の人はすぐ分かります)
- 各楽章の特徴を掴んだ演奏
- 主要なベートーベンソナタから選ぶのが主流だと思います。
- 第一楽章がソナタ形式の曲を選ぶのが一般的。
- 学校によっては選べないソナタがあるので注意。
- 繰り返しは基本的にはしません。
- 大抵の学校はシューベルトソナタも選択肢のうちです。
- ライブの場合1楽章だけ聞く場合もあれば、2楽章以上聞く場合もあります。
- ロマン派
- 審査の観点は
- 作曲者の個性、曲の特徴を理解し反映した演奏
- ロマン派にふさわしい表現力
- レガート奏法
- 私は人気がある曲はあまり選ばないようにしています。例えば…
- ショパン、バラード1番
- リスト、バラード
- 遅いテンポの曲は高い表現力が要求されます。例えば…
- ショパン、バラード4番、舟唄
- できれば始めの2分間でテクニック的な見せ場がある曲を選ぶ。
- ライブでは長い曲は途中からでも弾けるように
- 私の生徒はシューマン「謝肉祭」の「再会」から弾かされた事があります。
- 審査の観点は
- 近代、現代
- 審査の観点は
- 曲のメッセージを伝える表現力
- 曲に応じたテクニック
- ライブの場合、微妙なタッチやペダルを要する曲は、楽器に左右されるので注意
- 「一楽章だけで良い」と書いてあっても、全楽章準備した方が好印象、奨学金増の可能性。
- 審査の観点は
演奏上の注意点
- 始めの一音から最高の演奏を心がける
- ライブの場合は、弾いている曲を途中で切られて、次の曲を指定されます。急に次の曲のムードになれないうちに弾き始めてしまわないように、練習しておく必要があります。
- 第一印象は大事です。始めの1分を聞けば、だいたい残りが想像できてしまいます。
- 作曲者、曲の特徴、時代を反映した演奏
- 演奏者が作曲家、作品の通訳者として機能しているか
- ビデオ・オーデイションの注意
- もしライブに来ないのであれば、ビデオ・オーディションが最高の質でなければなりません。
- できればリサイタル・ホールか近い音響の場所で録画する事を勧めます。
- ロング・ドレス、タキシードとまでいかなくても、それに準ずる服装にするべきです。
奨学金の増やし方、実例などは以前のブログを参考にして下さい。