「聡の為にそんな格好したのか? そんなにアイツの気を惹きたいのか? 俺の前ではそんな格好見せた事ないだろう」

 終いには聡への嫉妬で、郁未は醜い自分を曝け出していた。
 会社では到底向けられる事のない郁未の表情が嬉しくなって、留美は質問に答えるどころか、つい笑ってしまった。

「笑い事じゃないだろ! 俺は怒ってるんだぞ!」
「心配してくれてありがとう」

 素直に留美はそう思えた。郁未に気にかけて貰えたのが嬉しくて微笑みかけると、またもや郁未に怒鳴られる。

「誰がお前なんかを心配するものか!」

 『お前』発言に戸惑うも、留美はそれでも気にかけてくれた郁未に顔が緩む。

「ジャージのまま外出出来ないから、途中でお店に寄って貰ってコレを自分で買ったの。専務の好みに合えばと……その……」
「え……?」
「お世話になるのだから、専務の嫌いな格好をして気分を害して欲しくなくて」

 さっきマンションのリビングルームでもこの格好していたのに、今頃気付くようでは郁未にはお気に召して貰えなかったのかと、留美は少ししどろもどろになる。
 けれど、はにかむ留美がいじらしく感じる郁未は、怒りが収まると口元が緩む。

「可愛いワンピースだよ」

 パステルカラーの花柄模様のワンピース姿。清楚な印象のあるフェミニンな姿に、歯が浮くようなセリフと思いながらも照れながら郁未がそう言うと、留美もまた照れては頬を赤く染める。