・「悲劇の世界遺産」井出明 著 | 有井努(ありいつとむ)の乱読ブログ

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多読はするもののインプットと比較してアウトプットが極端に少ない。
そこでブログを利用することにしました。
ノンフィクションが好きなジャンルです。齋藤孝氏もよく読みます。
さらっと内容に触れただけの読書日記ですが、読んでいただければ幸いです。

 

 

「世界遺産」と聞きますと、日本人にとっては

世界に認められた観光資源、と考えてしまうの

が一般的と思います。

 

そして原爆ドームなどは、悲しい歴史ではあり

ますが、人類が後世に伝えるべき「負」の遺産

とも考えられます。

 

しかし「負の遺産」という言葉や概念は日本人

だけが持っていて、当のユネスコもそんな区分

けはしていないのです。

 

そもそも自然遺産ならともかく、人間の営みが

関係している産業や文化遺産には、見方を変え

ればいくらでも「負」の部分は存在するはずで

す。

 

それは2018年7月に世界遺産登録された「長崎

と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の内容

を詳しく見れば理解できると思います。

 

当初地元では多くの教会を候補として挙げてい

ましたが、実はそれらの多くはキリスト教禁教

期ではなく、信仰が認められた明治6年以降の

ものした。そのためイコモス側から「禁教と関

係ないよね。もっと江戸幕府が弾圧していた内

容を伝えて」と、登録の延期がされたとか。

 

で、結局潜伏キリシタンが人里離れた場所に棚

田を作っていたというエピソードも盛り込んだ

らしいのです。

 

そもそも棚田は平家落人や切り捨てられた人が

残した景観としては世界中に存在するはずです。

 

つまり「後付け」であった部分が多いのです。

 

最近は「ダークツーリズム」という言葉がよく

聞かれます。

 

心地よい「世界遺産としての良いところ」では

なく「闇」の部分にもしっかり耳を傾けよう、

とする動きです。

 

コロナ禍で多数の観光客を呼び込む「量」では

なく、「質」を考える時期にあることを考えさ

せられる一冊です。

 

 

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