1993年にJリーグがスタートして、たったその6年後
1999年元日の天皇杯優勝を最後に横浜フリューゲル
スというチームが消えました。
今ではその痕跡は合併相手となった横浜Fマリノスの
「F」と、横浜FCの本拠である三ツ沢球技場くらい
でしょうか。
この本の題名にある「なぜ」に対して、本書では明確
に答えは提示されていません。
しかしヒントは散りばめられています。
創世記のJリーグバブルの崩壊があまりに早く、クラ
ブチームの運営というものを理解している人間が少
なかったことが一つ。
現在、同じようなチームの経営危機が発生すれば、高
給選手を放出し、若手主体のチームへ切り替えるのが
普通かと思います。しかし当時はこんな考えを持つ人
がいなかったのです。
そして2つ目の理由はなんと労働組合が組織されてい
なかったことです。
日本のプロ野球がスト権を行使して、1リーグ化を阻止
したのは記憶に新しいと思います。と言っても2004年
のことですが。
一方でJリーグ選手の労組化は2011年だったのです。
「ストライキは無理でも試合のボイコットで抗議の意
を表す方法もあったのでは?」とやや乱暴ですが、そ
うい意見もあったかもしれないです。
その答えは本書のキモの部分である、横浜フリューゲ
ルスの前身のチームの歴史を冒頭から追いかけている
理由にあるのです。
ノンフィクションにおいて時系列に物事を追いかける
のは、冗長な感を招くので、通常はクライマックスシ
ーンから入るのが常かと思います。
しかし横浜フリューゲルス消滅の種は、Jリーグの前
身である日本リーグ時代に蒔かれていたというのが、
著者の見立てかと思います。
だから冒頭から時系列に歴史を追っているのです。
歴史の妙を感じずにはいられない極上のノンフィク
ションです。
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