ことしのアユはでかい! | << 真菜板だより >>

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池袋「味里」、高田馬場「真菜板」、鳥取県智頭「うどん家&真菜板」と47年間の日本酒人生の最終章は長野県諏訪にて幕を開けました。
個性豊かな日本酒、とくに無濾過生原酒にこだわって、料理と酒のマリアージュを楽しむお店です。

番頭のばんです。

東京も急に涼しくなりました。
なんだか肌寒いくらいで、こんな時はやはりお燗ですねえ。

そう思って真菜板に行くと、この日も揖保川のアユが入ったそう<< 真菜板だより >>-今年の鮎
で、魚を見せてもらいましたが、その大きいこと!
25センチ近い長さもさることながら、パンパンにまるまると太って
ずっしり重いくらいです。
当然、じっくり塩焼きにしてもらいます。

焼きあがったアツアツを、箸を使うのももどかしいので、両手で
持って背のほうからガブリ。
薄くて張りのある皮を噛み切るとしっとり、ほろりとした身の感触。
あつあつの湯気とともに川の香りがふんわり満ちてきます。
ここで酉与右衛門の雄町をひとくち。うん、うまい。

ふた口目はもちろん、腹のほうからガブリ。
なんとも清々しい川の香りが口の中にあふれかえります。
そこにこれが楽しみな、なんとも言えないワタの苦み、うまみ。
さあ、こうなれば宗玄の純米八反錦をグーッとあおります。
うーん、深い。
 
<< 真菜板だより >>-23センチの大鮎
この日はどういうわけかお客さまも少なくて、私たちのほかは
近所にお住いの常連Eさんだけ。
こういう日は、そう、いろいろわがままの言える日です。
「じゃあ涼しいし、アユの頭と中骨で骨酒にでもしましょうか?」
てなわけで、中骨をさらにこんがりあぶってもらいつつ、熱燗
をつけてもらいます。

「たまには骨酒もいいねえ。昔、達磨正宗の社長のところでは
 骨酒ばかり飲んだねえ。これがほんとうに、美味しくてね。
 その時教わったんだよ、骨酒の時はお燗は60℃以上って。」
と、店主もノリノリで2種類の燗をつけています。

まずはEさんリクエストの竹鶴。小笹屋竹鶴の2010年です。
塗の椀にこんがり焼きあげたアユの中骨と頭を入れて、その上
からたっぷりとアツアツの小笹屋竹鶴を注ぎます。
ものの2分もたつと、しっかり色も出てきました。
<< 真菜板だより >>-鮎の骨酒

これをぐっといただきます。
うーん、香ばしいアユの香りと竹鶴の個性あふれる強い香りが
相まってなんとも形容しがたい芳醇さです。
アユのうまみと竹鶴のコクが一体になって、なんともゴージャス
な骨酒に仕上がりました。

もう一つは番頭のリクエストで、るみ子の酒。
おや、燗をするとこのお酒、少し竹鶴にも似た印象ですねえ。
意外に思いながらも、これまた中骨にたっぷり注ぎます。

さすがにこちらは香りも柔らかで、アユの風味が引き立ちます。
ずっと口に含めばあら不思議、アユと酒の持ち味がどちらも
いい方向に作用して、香り・うまみ・後味ともにバランス抜群。
いやあ、これはたいそう美味しいです。

竹鶴の骨酒はがっしりと飲みごたえのある、硬派な味わい。
るみ子の酒のは、バランスよくてつるつる飲めてしまう危険な
味わい。
どちらも甲乙つけがたいうまさですが、番頭はるみ子に1票!

いやあ、久々の骨酒で楽しかったですね。
それにしても、こんないい酒で骨酒はちょっと贅沢でしょうか。
揖保川のアユは今年まだまだ入荷するそうですので、機会が
あればぜひ試してみてくださいね。

一つだけご注意。
それは、骨酒が美味しすぎてついつい飲みすぎてしまうこと。
その点だけには気を付けて、どうぞお楽しみください。