父親たちの星条旗
海兵隊戦争記念碑(Wikipediaより)
『硫黄島からの手紙』と対を成す作品で、こちらはアメリカ側の視点から硫黄島戦を描きます。戦場の臨場感ある描写と、帰還後のプロパガンダ活動の静かなシーンの対比が鮮烈。色彩はくすみがかかり、戦場と記憶の重さを視覚的に表現しています。
硫黄島の激戦で撮影された「星条旗掲揚」の写真は、アメリカ中に希望と誇りを与えた。しかし、その写真に写った兵士たちの実像は、世間が作り上げた英雄像とは大きく異なっていた——この事実が静かに物語を開きます。
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監督:クリント・イーストウッド(Clint Eastwood)
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脚本:ウィリアム・ブロイルズ・Jr.(William Broyles Jr.)、ポール・ハギス(Paul Haggis)
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出演:ライアン・フィリップ(ジョン・ブラッドリー)、ジェシー・ブラッドフォード(レニー・ギャガノン)、アダム・ビーチ(アイラ・ヘイズ)ほか
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製作年:2006年(アメリカ)/日本公開:2006年10月28日
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ジャンル:戦争ドラマ、歴史、ヒューマン
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上映時間:132分
サクッとあらすじ
第二次世界大戦、硫黄島。アメリカ海兵隊が摺鉢山に星条旗を掲げた瞬間を捉えた写真は、戦費調達のための国債キャンペーンで利用されることになります。写真に写ったジョン・ブラッドリー、レニー・ギャガノン、アイラ・ヘイズの3人は、戦場での記憶と仲間の死を抱えながら、祖国で英雄として祭り上げられる。しかし、その栄光の裏にあるのは、プロパガンダのために作られた物語と、戦友を失った深い傷でした。
感想
日米の両面から描いた硫黄島2部作の1作目。
戦争真っ最中の硫黄島線を描いた映画だと思って見たのでプロパガンダも知らなかったので最初、良く判らなかったです
作られた英雄の葛藤を描いてます。
戦争で鼓舞するために物語作ったりしないといけないんだろうけど・・う~ん。
戦時中は もてはやされて戦後は歓迎されないとか(日本では〇級戦犯とかね)
本当に戦争する意味ですよね。
TOPIX
1944年9月の段階でアメリカ軍のフィリピンに次ぐ攻略目標は台湾とされていましたが第5艦隊司令官により硫黄島に着目される。
そしてレイテ島の攻略が早まりルソン島が落ちれば台湾は無力化されるとして硫黄島戦へ。
当初アメリカでは、攻略予定は5日間、死傷は15,000名を覚悟していると記者会見で述べていたが実際には甚大な被害を出しており母親たちから痛烈な批判をされています。
どうぞ神の聖名にかけても、硫黄島のような場所で殺されるために、わたしたちの最も優秀な青年を送ることはやめていただきたい。どうしてこの目的が、他の方法で達成できないのですか。これは非人道的であり、恐るべきことです。やめてください。やめてください。(Wikipediaより)
母親からの抗議文なんて・・日本では考えられませんね。
ちなみにアメリカではママが尊敬されており、子供が母親を侮辱したりするとパパが滅茶苦茶怒るらしい。
なので日本のように母親にクソババァなんて言われたらパパが大激怒するらしいです。
それは見習うべき良い文化ですね。
見所
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摺鉢山での星条旗掲揚シーンと、その背後で続く激しい戦闘描写。
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帰還後の兵士たちがパレードや国債イベントで見せるぎこちない笑顔。
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アイラ・ヘイズの「俺は英雄じゃない」という痛切な言葉。
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英雄像と現実の乖離:戦争の象徴的な瞬間が、国家のための物語として消費される現実。
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兵士の心の傷:PTSDや罪悪感と向き合う兵士たちの姿が、人間的で痛ましい。
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日米の視点をつなぐ作品構造:同時期の出来事を『硫黄島からの手紙』で日本側視点から描くことで、戦争の全体像が浮かび上がります。
こんな人におすすめ
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戦争映画の中でも、戦闘よりも人間の心や社会的背景を描いた作品が好きな方。
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メディアや歴史の“作られ方”に関心がある方。
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『硫黄島からの手紙』とセットで多角的に歴史を見たい方。
『父親たちの星条旗』は、国のための物語に利用された兵士たちの、知られざる心の戦いを描きます。栄光の写真の裏にある真実を知ることで、戦争の持つもう一つの顔が見えてきます。