・・・そもそもが「イシバシ」ですから「石」にこだわるのは当然なんですが、「Nature」という視点から今回は調べていますので、ちょっと賢く?なれるかな。最近の大ニュースは、「チバニアン」です。
《77万年前の地層「田淵の地磁気逆転地層」》いちはらでまなぶNo.01
https://www.city.ichihara.chiba.jp/asobu_manabu/learn/chibanian.html
「チバニアン」は、千葉時代という意味をラテン語にしたものです。現在、国際学会では、今から約77万年前~12万6千年前の時代に、この「チバニアン」という名前を認めるか審査しています。これはジュラ紀やカンブリア紀といった地質年代の名称にチバニアンが並ぶという日本の地質学においても重大な出来事。その証拠となる地層こそが、この市原市の田淵地区にあるのです。
ジュラ紀や白亜紀などの地質年代は化石や地層などの移り変わりにより、区分が決められています。現在、チバニアンが検討されている「第四紀」という区分では、★地磁気の逆転現象が境界となっています。この現象がよく記録されていることや地層が観察しやすい場所にあることから、地質年代の境界を最も良く示す「GSSP(国際標準模式地)」の最終候補に選ばれています。
この地層は、特に希少な地質鉱物として認められ、市内で初めて国の天然記念物にふさわしいとされました。これは、77万年前に起こった地磁気の逆転現象の前後の地層が容易に観察でき、さらに年代が特定された火山灰層によって見てわかる場所は、他に例がないことなどが大きな理由です。さらに、当時の環境を示す花粉やプランクトンなどの微化石が地層中に含まれていることも学術的に評価され、★平成30年10月15日に国の天然記念物に指定されました。
川底を触ってみると、砂や泥が堆積した海底が隆起したため、比較的軟らかい地層となっていることがわかります。川底には、ところどころ貝の化石が埋まっているのが見えます。これは、まさに約77万年前に海の底にいた貝なのです。★生痕化石と呼ばれる、生物が這った痕や糞などの化石を観察できます。一見地味だけど、当時の生物の形だけでなく、どんな生活をしていたかがわかります。
地層の表面のところどころに穴があいていますが、77万年前当時の地磁気を調べるために、試料採取をした跡です。★磁気が逆転すると何が起こるのか。、実は、詳しくは解明されていません。ただし、地球の磁場が不安定な状況になるので、一説には携帯電話などの電波は使えなくなるともいわれています。過去360万年の間に地磁気は十数回逆転し、最後の逆転は田淵で確認された77万年前のため、いずれまた逆転すると見られています。田淵の地磁気逆転地層を詳しく調査することで、その時に備えることができるかもしれません。
ここは、貴重な地層です。絶対に削ったりしないでください。また、地層の近隣地は民有地です。地元の方々のご理解とご協力で地層観察が可能となっています。近隣の方々に迷惑にならないように見学してください。
★地層「千葉セクション」の審査状況について/-GSSP認定へ向けて-(2018年11月)
https://www.aist.go.jp/aist_j/news/au20181119.html
★市原市田淵の地磁気逆転期地層のGSSPへの認定について/2019.2.19
https://www.city.ichihara.chiba.jp/bunka/bunkabunkazaitop/chiba_sectoin.html
《NEWS》2019.6.25千葉日報より
妨害禁止へ条例案/市原市、調査促進で「チバニアン」
国の天然記念物で「チバニアン(千葉時代)」命名申請の根拠となっている市原市田淵の地磁気逆転地層を巡り同市は24日、学術的な調査研究の目的で立ち入ることへの妨害行為を禁じる罰則付き条例案を公表した。9月定例市議会への提出を目指す。同市によると、地層の調査研究促進を目的とした条例案は全国的にも珍しいという。条例案は、「特定地域」内の土地の所有者及び権原に基づく占有者は「正当な理由なく、試料採取のための特定地域への立ち入りを拒みまたは妨げてはならない」としている。また、「威力を用いて試料採取のための特定地域への立ち入りを妨害した者は、5万円以下の過料に処する」との罰則を盛り込んだ。地磁気逆転地層の一帯約2万8500平方メートルについて国は天然記念物に指定。条例が成立すれば、ほぼ全域が特定地域となる。茨城大などのチームは、地質年代のうち77万~12万6千年前を「チバニアン」とすることをめざし、同地層を代表的な地層「国際標準模式地」とするよう国際学会「国際地質科学連合」に申請。2次審査まで通過したが、地層近くの土地(155平方メートル)に賃借権が設定されたため、研究目的の立ち入りが困難になる恐れがあり、3次審査への影響が懸念されている。9月までに審査の手続きに入らないと、時間切れで計画が白紙に戻る可能性がある。賃借権は、申請に反対する「古関東深海盆ジオパーク推進協議会」代表の楡井久・茨城大名誉教授名で設定された。楡井氏は研究データの捏造(ねつぞう)を訴えている。臨時記者会見で条例案の原案を公表した小出譲治市長は「私権の制限は最低最小限」と強調。条例により立ち入りが保証されれば「国際標準模式地の認定に寄与する」とした。市民意見を募集した上で、9月議会への条例案提出をめざす。
◆「大きな一歩に」チバニアン申請チームの菅沼悠介国立極地研究所准教授(地質学)の話
条例案が議会を通れば、地層周辺への自由なアクセスが保証され、国際学会での3次審査に向けて大きな一歩になるだろう。(タイムリミットの)9月までに手続きを進めることができると思う。市から力強い支援をいただいた。われわれもしっかり準備したい。
《NEWS》2019.7.27ビジネスジャーナルより
「チバニアン」めぐり地質学者同士が泥沼論争…「データのねつ造、改ざん、盗掘」が争点
https://biz-journal.jp/2019/07/post_111638.html
「チバニアン」は茨城大学、国立極地研究所など22機関32名の研究者チームが2017年6月に正式申請を行い、3段階ある審査および承認のための最終投票のうち、昨年11月に第2段階の審査が終了。現在は就活になぞらえれば「内々定」の段階で、残る3次の本審査と最終投票での「内定」を目指していた。「内定」に至る条件として、「現地への自由な立ち入りと試料採取」が保証される必要がある。決定は委員の投票で決まり、★決定までのプロセスはオリンピックの開催国決定に似ているが、選定条件を記すガイドブックの基準との合致が最大の決め手となる。研究チームのリーダーである岡田誠・茨城大学理学部教授がこう語る。「本来なら5月には第3次の申請書を出せていたので、今年の秋には決定していたはずです。第2次審査も昨年の4月には終わるはずだった。それを古関東深海盆ジオパーク認証推進協議会の方々が、いろんなメールをイタリア側研究者や国際機関に送りつけたので、それで審査が2カ月くらい中断したんです。『千葉セクションの地磁気データがねつ造されていて、地磁気の逆転が捉えられていないのではないか』という疑いをかけられたので、我々はそれに対して事実関係を説明するためのレポートを昨年5月18日に提出して、同19日に文部科学省で状況を説明する記者会見を開いたわけです。昨年11月に終了した第2次審査では、疑義も含めて投票で決定しました。疑義自体、最初から科学的な議論ではなかったのですが、データの採り方などの状況を説明して、それが認められました。ですので、その件について国際的な学術の場での疑義はなくなりました。しかし、楡井氏はそれでもまだねつ造・改ざんだと国際機関にメールを送り続けているんです。でも、国際機関は相手にしないことを決めました。その件は問題ないと決着されているからです。それで、土地の権利を裏で獲得したということでしょう」国は昨年10月に現地を天然記念物に指定し、市原市教育委員会が土地の買収を進めていたが、データのねつ造・改ざんを理由に「チバニアン」申請の取消を求める「古関東深海盆ジオパーク認証推進協議会」のメンバーが、昨年4月にイタリア側研究者や国際機関にメールを送信。これを受けて5月に「チバニアン審査中断」と新聞が報道。さらに今年5月には、昨年7月の段階で、地権者との間で月5000円の賃料で10年間の借地権を設定し、すでに登記済みであることが判明。これにより「現地への自由な立ち入りと試料採取」の保証が難しくなった。
いきなり登場して「待った」をかけ、今やすっかりチバニアン申請を妨害する悪役となった楡井氏は1940年10月、福島県会津の生まれ。山歩きや地層などの自然観察に興味を持ち、大阪市立大学大学院で地質学を専攻。大学院修了後1970年に千葉県職員となり、30年近く地盤沈下や地質汚染、液状化などの研究に取り組んだ。県水質保全研究所・地質環境研究室長として在職中に京都大学客員教授をはじめ多くの大学の非常勤講師なども兼任し千葉県職員を退職。1998年4月から茨城大学広域水圏環境科学教育研究センター教授に就任。2006年に茨城大学を退職し、NPO法人日本地質汚染審査機構理事長に就任。2009年4月に発足した「古関東深海盆ジオパーク推進協議会」の会長でもある。また、地質汚染診断士として豊洲のマンション敷地の地質汚染浄化の審査などにもかかわってきた。ジオパークは「大地の公園」のこと。日本国内には44地域あり、うち9地域がユネスコ世界ジオパークに認定されている。この養老川河岸の田淵の露頭(千葉セクション)をGSSPに提案するための第一次調査は、すでに1991年から大阪市立大学の故市原実名誉教授、大阪市立大学の故熊井久雄名誉教授らを中心に行われており、千葉セクション開拓の先達である市原教授の愛弟子だった楡井氏も当初から調査に積極的にかかわってきた。田淵露頭の地権者や、田淵町会の人々との交渉、露頭の保存、試料採取の許可、シンポジウムなどの準備も担ってきた。91年の国際第四紀学連合北京大会では、楡井氏らが房総半島上総層群国本層の層序および古地磁気測定結果を発表。日本の房総半島はこのときはじめて、ニュージーランド、イタリアなどとともに候補地として名前があがった。その後も、千葉セクションでは各国の研究者を招いての国際巡検が実施され、95年の国際第四紀学連合ベルリン大会のシンポジウムで、千葉セクションは熊井名誉教授らにより候補地として正式な提案がなされた。だが、国際第四紀学連合により、イタリア南部のMontalbano JonicoセクションとValle di Mancheセクション、および日本の千葉セクションの3候補地のなかからGSSPを選定する方針が正式に示されたのはようやく2006年のことである。その前後には、新生代・第四紀・更新世の前期・中期の境界をめぐり国際機関でさまざまな議論が起こり、2004年には国際地質科学連合、国際層序委員会の層序表から「第四紀」の名称が消え、2008年の万国地質学会議オスロ大会で再び「第四紀」の名称が層序表に復活するまで混乱が続いた。同大会では候補地の予備投票も行われ、この時点で千葉セクションは第3位であった。(以下略)
・・・難しいことはわからないので、とにかく結果報告を待つことにします。
《参考》房総の地学展示室の「チバニアン」関連展示/千葉県立中央博物館
260-8682千葉県千葉市中央区青葉町955-2/043-265-3111
http://www2.chiba-muse.or.jp/www/NATURAL/contents/1562232180885/index.html
近年話題となっている「チバニアン」に関して、昨年度にようやく採取することができた「地磁気逆転地層はぎ取り標本」をお披露目しています。ただし、国際標準模式地の候補となっている市原市田淵の養老川沿いの露頭は国の天然記念物に指定されたことから、今回は約1.5km西方の市原市柳川地区に露出する地層を採取しました。田淵と同じ「白尾火山灰層」が明瞭に見られ、その約1m上位に地磁気逆転の位置が存在します。房総の地学展示室のカウンター上には、今なぜこの地層がホットな話題になっているのかを説明した解説シート、「誕生するか?『千葉時代(チバニアン)』」をご用意しました。
(地学研究科 主任上席研究員 高橋直樹)
★地球は1つの大きな磁石になっています。地球内部の中心核のうち、外核は液体状の金属(鉄やニッケルを主体とする)で、この部分の熱による対流や地球の自転による運動によって電流が発生し、電磁石の原理で地磁気が発生すると考えられています。現在の地磁気は、双極子磁場と呼ばれ、棒磁石のように北極付近に磁石のS極が、南極付近に磁石のN極が存在します。そのため、方位磁針のN極は北を、S極は南をさします。しかし、地球の歴史の中で、地磁気が逆転していた、つまり、方位磁針のN極が南をさしていたことが何百回もあったことがわかっています。最後の逆転時期が、「チバニアン」の始まりに相当する約 77 万年前です。地磁気が逆転する理由は、基本的には外核内の液体金属の対流のしかたの変化によると考えられ、人工衛星による地磁気の精密観測データをもとにスーパーコンピュータで計算を行うなどして、磁場逆転の様子が再現されているようです。しかし、実際の外核内の対流は極めて複雑であり、さらなる高性能コンピュータによる計算やモデル実験などを併せて、より現実に近いメカニズムを解明する努力が続けられています。
●また、今回のはぎ取り地層のすぐ近傍から産出した、クモヒトデ類の化石も展示しています。現在のところ、★ハコクモヒトデ★リュウコツクモヒトデの仲間の2種類が確認されています。これらは、現在も、三陸以南の水深数10〜数100mの海底に生息しています。
●ハコクモヒトデ
https://www.godac.jamstec.go.jp/bismal/j/view/9025270
●リュウコツクモヒトデ
https://www.godac.jamstec.go.jp/bismal/j/view/9000254
《参考》5本腕のクモヒトデ型ロボット登場/想定外にも対処、東北大など開発
ロボットには人型やヘビ型など、さまざまなタイプがあるが、クモの脚のような長い5本の腕を持つヒトデの一種「クモヒトデ」をモデルにしたロボットが登場した。外敵に襲われ腕を数本失っても動ける「本物」の機能を模倣し、東北大などが開発。想定外の事態で故障しても即座に自分自身で対処し、そのまま移動を続けられるという。自分自身で自律的に移動できるロボットは、災害現場や宇宙環境など人間が到達できないような過酷な環境下でも、適切に能力を発揮することが期待されている。しかし、多くのロボットは少しでも故障が発生すると全体に影響が及び、機能が停止してしまうことが大きな課題となっていた。現時点での対策は2つある。1つ目は、あらかじめ起こり得る故障を考えて対応策を用意しておくこと。だが、これでは想定外の故障に対応できない。2つ目は、学習や試行錯誤を通じてロボットが故障に応じた動き方を習得することだが、複雑な計算が必要になるため、適応するまでに数十秒から数分もの時間がかかってしまう。そこで研究チームは、動物の動きを参考にすることにした。多くの動物は、身体の一部に障害が生じても即座に対応することが可能だからだ。そして、数ある動物の中からクモヒトデを選びだした。クモヒトデは、盤と呼ばれる体の中心部分から、細い5本の腕が放射状に伸びた棘皮動物の一種だ。外敵に襲われるなどして腕を何本か失っても、残りの腕を即座に協調させて動き回れることが知られている。クモヒトデは、「脳」と呼べるほど発達した中枢神経を持っていない。そのため、一部の腕を失ってもスムーズに移動することができるのは、残った腕から得る局所的な感覚情報に基づいているらしい。チームは、腕を除去したり短くしたりしたクモヒトデの行動観察で、残った腕の動きについて、こんな仮説を立てた。クモヒトデが前進する際はまず、放射状に伸びた5本の腕で地面を押し、それぞれが地面から押し返される力を検出。進行方向に向けて踏ん張れると感じた腕にはさらに力を込めて地面を押し、前方へ進む。一方、踏ん張っても進みたい方向に行けないと感じた腕は、そのまま力を込めず何もしない。どう動くかは、個々の腕が判断している。この実にシンプルな制御機構をプログラムに置き換え、開発したクモヒトデ型ロボットに搭載。5本の腕を使って前進している最中に、1本の腕をハンマーで破壊したところ、即座に残り4本を協調させて前進を続けた。さらに続けて腕を破壊していっても、前進は可能だった。ロボットの腕が協調するパターンなどは、実際のクモヒトデの動きとおおむね一致したという。この研究成果は、災害現場などの過酷な環境下でも人間による修理をあてにせず、自律的に活動できるロボットの開発につながる。しかも、脳のような中央集権的で高度な制御機能を使っていないことから、極めてシンプルな形で、素早く故障に対応できる点が大きなメリットだ。近年の製品開発の現場では、生物が持つ優れた機能を模倣して活用する★「生物模倣(バイオミメティクス)」という開発手法が大きな流れとなっている。壁や天井を平気で歩けるヤモリの脚がヒントの粘着テープ、光をほとんど反射しない蛾の目の構造を参考にして生まれた無反射フィルム、水中を高速で泳げるマグロの皮膚特性から開発された船舶用塗料など、実用化したケースも数多い。今回のクモヒトデ型ロボットも、典型的な開発例だ。一見、生物とロボットは★対極の存在であるように見えるが、これからも意外な生物から、私たちの生活に役立つ優れた機能が見つかるかもしれない。
・・・ですよね、生物(Nature)から学ぶことは一杯あります。