(マシンズーについて)
壁画はカッティングシートなどではなく、直に描かれたものである。機器や配管の裏まで絵が入っているので、機器類を設置する前に描かれたのであろう。機器の色彩選択と壁画作成は別の人が担当しており、色彩はカラーデザイナーの★稲峰冨枝氏、壁画は画家★森喜久雄氏と多数のアシスタント、ヘルパーによると記録されている。
【稲峰冨枝】
1951年生まれ。流通科学大学経営学部中退、大阪芸術大学名誉教授(色彩学)近藤恒夫氏に師事し、環境色彩を学ぶ。★㈱カラーテクノロジー研究所代表取締役。代表作に「日本原電敦賀原子力発電所環境デザイン計画」「興亜石油泉北石油プラント環境デザイン計画」などがある。
《日本カラーテクノロジー研究所》
569-0814高槻市富田町1-14-6-721号/072-693-5792
昭和35年5月10日/名展社近藤色彩設計研究所として創業
昭和61年10月12日/(株)日本カラーテクノロジー研究所設立
(茨木市東太田3-6-20/072-620-7739)
平成7年9月12日/九州事務所設立
創業者【近藤恒夫】
明治45年生元大阪芸術大学教授(色彩学)日本色彩学会名誉会員、弊社顧問
代表取締役【澤一寛】
昭和30年生、大阪芸術大学環境計画学科卒業、同大学副手
近藤色彩研究所主任研究員をへて当研究所代表取締役
専門は色彩環境設計、まちづくり、広告景観、景観デザイン
日本色彩学会理事、評議員
・・・初めに、10分ほどDVDを観ながら説明をしていただきました。そしてヘルメットをかぶって、いざマシンズーへ。
《参考》2013「けい・きゅーぶ」vol.1
本誌は、日本建築学会の活動として設けられた「『可愛い』を求める心と空間のあり方に関する研究WG」が発行している季刊誌で、名称:「けい・きゅーぶ」はK の3乗、つまりKKKの意です。それらは、「『可愛い』を求める心」のK、「空間のあり方」のK、研究のK です。本誌では、「『可愛い』を求める心と空間のあり方に関する研究WG」をK3WG と略記しています。
・・・この興奮は、なかなかおさまりません。
新梅田シティの地下の機械室は、通常なら地味な色に囲まれているはずの機械室を機械の動物園と位置付け、その比喩に合わせて、壁や柱には樹木や動物のイラストを配し、設備機器自体もパステル調の色彩で覆っている。また、それぞれの機器には機器の機能に応じた名前をつけてある。例えば非常用発電機が通常は休眠しているから「スリーピングライオン」であり、機器の性能の説明パネルもこの名前に合わせて作られてある。このような演出の理由は、人間優先のインテリジェントビルという目標に呼応して、裏方たる機械室もワーカーのモチベーションを高め、そこで働くことを誇りに思う環境を目指したためである。また、色彩豊かな空間とすることでワーカーの疲労を和らげることも狙っている。色彩の選定は配管等を機能別に色分けした以外は、ほぼ専門のカラーデザイナーに任せてある。
・・・森さんのサインだけでなく、スタッフ全員の名前が記されています。感動です。
完成して間もない時期に、川や大阪市の中心部が一望できる★空中庭園、懐かしい昭和の風景を再現した★滝見小路という地下の飲食店街と地下機械室★MACHINE ZOO の3カ所を案内する有料ツアーも実施されていた。
雑誌「建築文化」の別冊としてこのビルの概要が紹介されている(建築文化別冊 空中庭園=連結超高層建築1993)。その中に「機械室のプレゼンテーション」という地下機械室の計画概要を紹介した記事がある。MACHINE ZOO が作られた理由は2つ挙げられていた。一つはこの超高層ビルのプロジェクトが始まったころに「市民開放の都市設備」というコンセプトが掲げられ、都市の再開発で身近に工場が無くなった子供達に基幹的な設備をわかりやすく見せたかったため、もう一つは3K(きつい、汚い、危険)と言われた当時のブルーカラーの労働環境のイメージを払拭し、誇りの持てる職場を作るためと記している。
・・・カエルも持参して、森さんを偲びます。
この機械室の建設は前例のない試みであった。例えば、通常、大型の設備機械は製造メーカーで塗装されたものが持ち込まれ、配管は各機械室ごとに機能別に塗装色が決定されるが、ここでは機械は色を塗り替え、配管も新たに機能別を考慮しつつ色彩を決定した。その塗装色の特徴を強調するため、通常の機械室の光源に加えて、演出用の光源を追加し、見学者が訪れた際は、その光源を用いることとした。さらに、機械の輪郭に沿ってネオンを取り付け、ブラックライトの照明だけにすると、機械が浮かびあがる仕掛けも採用している。
MACHINE ZOO で採られた手段としては、大型機械を動物になぞらえてネーミングし、機器の色彩は、働く人達の疲労を和らげることを考慮して決定されたそうだ。また、壁画は疲れをいやす、誇りを防止する効果があったとも紹介している。有料で見学ツアーを実施していた際には、切り抜いて折り曲げる紙製のミニチュアの動物園(ジオラマ)が記念品として渡されたが、帰宅後のそういう作業も親近感や愛着を抱かせる効果があったのではないだろうか。建築工事として通常の建物と異なるのは、塗装工事と照明工事だけである。
MACHINE ZOO は、21 世紀の街「新梅田シティ」を24 時間支える心臓部です、とはじまるリーフレットは、一般市民の利用者がなかなか気付かない機械室の重要性を伝えている。機械室で働く人たちは、まさに縁の下の力持ち。地味で忘れられる存在でありながら、施設の生命を支えている極めて重要な業務に従事している。一般のお客様から見えない秘密の場所にあるこの動物園は、子供の探検心をくすぐる。「僕のお父さんはあの大きなビルの心臓で働いているんだ。そこは、秘密の動物園なんてすごい!」そんなお父さんを想う子どもの気持ちが「可愛い」。一つ一つの機械を恐竜メタファーとした動物園そのものは素直に「可愛い」とは言いづらい。しかし、その動物園に思いをはせる子供たちと働くお父さんの関係は「可愛い」と感じる。こうした空間そのものだけではなく、その空間を「場」として捉え、その場で展開するドラマをイメージすることで機械の動物園がかわいく見えてくる。関係性のデザインによる「可愛い」空間だ。
・・・地上の喧騒から離れ、まるでタイムスリップしたかのような、森喜久雄ワールドがそこにありました。