■1929「鶴巻鶴一邸(現・栗原邸)」/607-8403京都市山科区御陵大岩17-2
本野が勤務していた京都高等工芸学校・校長であり、染織家でもあった鶴巻鶴一の自邸。1924年設計の本野自邸に比べて年代がかなり下がるためか、デザイン面でも自由度が増し、平面プランも大規模で複雑になっています。ここではモダニズムの追求と言うよりは、中村鎮式コンクリートブロック造の造形的な可能性を追求した形跡が随所にうかがえると、研究者の笠原氏は本論で分析しています。しかし、玄関ポーチやインテリアの家具なども当時のまま現存しており、本野デザインの魅力がいっぱいつまった貴重な住宅と見ています。コンクリートの軒や庇は京都の気候風土を考慮した「日本インターナショナル建築会」の精神が生きています。
これまで一般公開は過去3回行われ、今年は5年ぶり。この間、2011年から13年にかけ、★京都工芸繊維大学大学院の教育プログラムの一環で、学生も加わり修復作業が行われました。現在までに、屋上防水と室内3部屋の修復が完了しています。公開時は、修復がされていない部屋を見ることもできますが(一部立ち入り禁止)、その壁や天井ははげてボロボロここでも84年の歴史を感じることができます。「京都というと江戸時代以前の古い建物に目がいきがちですが、近代の京都では、ヨーロッパに学んだ建築家が大学に勤めながら最新のデザインや理論を追求するなど、建築では東京よりも先進的な部分がありました。この一般公開で、京都にこれほどの価値のある近代建築物があることを知ってほしいと思っています」
★京都工芸繊維大学大学院「モダニズム建築改修フィールド実習」
http://www.archi-resource.net/?p=2772
本プログラムでは、京都市内にある栗原邸を実習対象に選定した。栗原邸は1929年に京都高等工芸学校(現京都工芸繊維大学)校長、鶴巻鶴一の自邸として建てられた。設計者は京都高等工芸学校教授で建築家の本野精吾(1882~1944)である。当時最先端の構法であった「中村式鉄筋コンクリート建築」(通称:鎮ブロック)によるコンクリートブロックを用いて建てられており、合理性を追求したモダニズムの建築である。
モダンムーブメント期の建築保存のための国際組織DOCOMOMOの日本支部によって、栗原邸が日本を代表する優れたモダニズム建築の一つに選ばれている。2012年3月現在、築82年を数える栗原邸は長年雨漏りに悩まされてきた。建造物に与える影響が懸念されることから、改修を計画・実施することとなった。栗原家のご厚意により栗原邸改修計画の過程をフィールド実習の場としてご提供をいただいた。
・・・「栗原邸」のすぐ北側に「琵琶湖疏水」が流れています。せっかくですから、この後「赤レンガ」巡りをしたいと思います。