トノサマガエル調査(4)
●2005清野友義
1945年徳島県阿南市生まれ。大阪の新劇団で13年間の活動の傍ら、生活のため書籍取次店へ。「いい本」が売れない状況を目の当たりにし、移動本屋を始める。作家・水上勉さん、田島征彦さんらに認められ、その協力を得て1984年に大阪府高槻市に子どもの絵本専門店を開業。売れ行き不振に苦しむ日々の中で、原画をスライドに映し、読み語る「きよの絵本劇場」を発案。
※水上勉先生は『飢餓海峡』『雁の寺』『越前竹人形』『越後つついし親不知』など一般文学で知られている。しかし、新潮社で水上先生の担当編集者藤野邦康さんは推奨作品のトップに長編童話『ブンナよ、木からおりてこい』続いて『宇野浩二伝・上』と『飢餓海峡』をあげている。だが、『ブンナよ、木からおりてこい』はそんなに知られていない。理由は、童話を子どもだけの物と思われているからだろう。でも、よく考えてみると子どもの頃に感動した読み物であれば一生、心に残るだろう。やがて、水上先生の代表作は『ブンナよ、木からおりてこい』になるかもしれない。生前、「私の作品は子どもたちに読まれる『ブンナよ、木からおりてこい』しか後世に残らないからよろしく頼む」と語り継ぐことを託されている。遺志を継ぎ上演のメインとなりつつあるこの頃(2005年)である。
「ブンナよ、木からおりてこい」「じごくのそうべえ」などの清野節はマスコミでも評判となり、以降、幼稚園や学校、地震・津波被災地など心のケアも含む1300回にも及ぶ公演活動を通じ、子どもやお母さんたちに、ファンタジーの楽しさ、生きることの素晴らしさを伝えてきた。脳梗塞に倒れたのは2005年のこと。懸命なリハビリを重ねつつ、2006年復活公演を果たす。今後は「お母さん大学人間絵本学科~きよの絵本劇場」としても、活動していくことに。「車椅子の人」となった今、すべての人に改めて伝えたい、絵本の素晴らしさ。そして、命の大切さ。そのメッセージは、「清野友義の絵本暮らし抄」として発信され、子育てや人生を考えるヒントとなっている。
●2007トランタンネットワーク新聞社「ブンナプロジェクト」代表・藤本裕子
新聞や雑誌の発行、イベントや親子のたまり場、家庭保育園事業、講演会の企画運営など、たくさんの「メディア」と「場」を通して「子育て情報」を発信してきました。しかしながらいじめや虐待をはじめ、子どもたちをめぐる事件や事故は多発、「子育てに夢が描ける社会」はいまだ実現されず、子育て環境は劣悪化の一途をたどっています。何につけても思うのは、「感性の塊」のような子どもを産み、育てるときに大切なのは、やはり頭で考える知識や学問ではなく、心で感じること、子どもと一緒に体感することではないでしょうか。「お母さん大学」では、お母さんたちにそのことを伝えていきたい。そんなことを考えていたときに、『ブンナよ、木からおりてこい』(水上勉作/若州一滴文庫刊)という、一冊の童話に出会いました。読んでびっくりしました。私が伝えたい大切なことのすべてが、そこに書かれていました。子育てとは何か、生きるとは何か? この本を読み終えたとき、心が震えました。巻末には作者、水上勉さんによる「母たちへの一文」があり、まさに「運命の出会い」を感じました。「母たちへの一文」には、「子どもというものは、本を読むより話をききたがるものだということを知った。話をしておいてからあとで本をあたえると、不思議に本がきらいな子でも読むのだった。私は自分のもっていた童話本を片っ端から話してきかせたあとで、皆に廻しよみさせた」(本文より)とあります。長編のブンナを読み語るのは、容易なことではありません。でもそこには、読み手(親)と聞き手(わが子)のあたたかい空間があります。そのゆったりとした時の流れの中で、子どもたちの心は育っていくのです。子育てとは、生き方を伝えること。巨大化する情報社会の中で本当に大切なことを伝えていく「お母さん大学」は、老若男女響学。子育て中の母親はもちろん、すべての人と一緒に「子どもたちの未来」を考えていきます。大人たちが次世代育成を意識し、いきいきと自分の人生を生きていくことこそが、子どもたちの未来をつくります。そのための出会いや気づき、学びや行動の場が「お母さん大学」です。私たちは「お母さん大学ブンナプロジェクト」として、ブンナを日本中に広めていく活動をしていきます。子育てに忙しい手を休めて、ブンナを手にしてみてください。お母さんはもちろん、お父さんも。さらに、子育ては終わったという大人たちも。ブンナを自らの人生に重ねて何かを感じてくれた人たちが、子どもたち、そしてパートナーやお友だちに。そんな風に、ブンナを読んで何かを感じてくれる人が1人、2人…と増えていくことを、心から願っています。
●2008宮本亜門
1958年新橋演舞場近くで生まれる。1978年にミュージカル『シーソー』でダンサーとしてデビュー。1980年にはミュージカル『ヘアー』に出演。1987年『アイ・ガット・マーマン』で演出家デビュー。1988年、文化庁芸術祭賞受賞。2004年ミュージカル『Into The Woods』の演出で朝日舞台芸術賞の秋元松代賞を受賞。
2008年、新作ミュージカル『Up In The Air』を世界初演として米・ワシントン・ケネディーセンターで発表。水上勉の「ブンナよ、木からおりてこい」を原案にした作品、ドリームガールズの作曲で知られるヘンリー・クリーガー(Henry Krieger)を起用し世界初演。
●2013年世羅町「ダルマガエル米」の販売を始めます(広島市安佐動物公園)
安佐動物公園の自然保護活動が取り持つ縁で世羅町「ダルマガエル米」の販売を始めます。安佐動物公園では、希少なカエルであるナゴヤダルマガエルの保護活動に協力するため平成20年から園内の売店で「ダルマガエル米」の販売を続けており、2013年の新米を11月2日(土)から販売します。「ダルマガエル米」とは、世羅郡世羅町小谷地区の「ナゴヤダルマガエル」が生息する水田で、無農薬で栽培し収穫したお米(あきろまん)です。近年の日本の稲作では、稲の茎を必要以上に増やさないために、田から一度水を抜いて乾かす「中干し」を出穂期前に行います。一般的な稲では、この中干しがナゴヤダルマカエルの繁殖期にあたり、オタマジャクシが干からびて死んでしまいます。このため、小谷地区では中干しの時期が遅くて産卵~幼生期を外して作付けが可能な「あきろまん」を栽培しています。また、生息するダルマガエルが害虫を食べてくれるため無農薬での栽培が可能なのです。ナゴヤダルマガエルは、広島県の絶滅危惧Ⅰ類に分類される希少なカエルで、現在では県内の自然生息地は三次市内の2か所の水田のみです。平成15年には、福山市神辺町の自然生息地である水田が開発のために埋め立てられることになり、広島県が主導してナゴヤダルマガエルを捕獲し、安佐動物公園を含む数施設で保護しました。安佐動物公園は、平成17年に飼育下繁殖に初めて成功し、さらに、新たな生息地づくりを目指して環境を整えた世羅郡世羅町小谷地区の水田で、地域住民との協働により幼生(おたまじゃくし)の放流や生息調査に取り組んでいます。このことで平成20年度は環境省から、「ナゴヤダルマガエル生息域外保全モデル事業」として助成を受けました。
・・・全国で「トノサマガエル」「ダルマガエル」のことが話題になっていることが、調査の結果よ~くわかりました。