ミュージアム(番外編)
◆【プンタ・デラ・ドガーナ(Punta della Dogana)】◆
オーナーは、世界を代表するアートコレクターのフランソワ・ピノー氏が運営する財団。17世紀に建てられた古いベニスらしい建物をグッゲンハイムとの入札争いに勝って取得、安藤忠雄にリノベーションを依頼。第53回ベネチア・ビエンナーレの開催と同じタイミングで美術館もオープンしました。威厳ある重厚な真っ白な外壁に安藤忠雄のミニマルなコンクリート、その中に世界を代表する現代美術の作品たちが所狭しと飾られている。歴史ある建物の中に収められているから余計に現代アート作品の表情がいきいきと浮かび上がり、ゴージャスな空間を生み出しています。
★2009年6月
ベネチアの歴史的建造物「プンタ・デラ・ドガーナ」安藤忠雄さんが新旧素材、調和にこだわり再生
世界最大規模の美術展「第53回ベネチア・ビエンナーレ」が開かれているイタリアのベネチア市で、2009年6月建築家の安藤忠雄さんが手がけた現代美術館「プンタ・デラ・ドガーナ」が開館した。制約の多い歴史的建造物の内部を、安藤さんが一新した作品だ。プンタ・デラ・ドガーナはベネチアの中心部サンマルコ広場の対岸にある。二つの運河に挟まれた島の先端で、敷地面積は約5千平方メートル。15世紀に税関として建てられ、17世紀に現在の姿になった。「海の税関」と呼ばれている。ベネチア市は、倉庫や事務所として使われていたこの建物を現代美術の中心的な施設にしようと計画。コンペの結果、フランソワ・ピノー財団と組んだ安藤忠雄さんの案が選ばれた。ピノーさんはフランスの大富豪で、現代美術の世界的なコレクター。美術館はピノーさんの所蔵品から作品を選び、展示する。同市によると総事業費は約27億円。安藤さんが建築物で見せたのは、古い素材と新しい素材との調和だった。まず仕切り壁をすべて撤去し、あらわになったれんがの壁や三角形に組まれた木の屋根を修復した。イタリアには古材バンクがあり、同じように古びた材料を使うことができるため、風合いを損なわずに直すことができるという。一方、新たに加えたコンクリートには徹底的にこだわった。安藤さんは「妥協のない現代美術の作品を展示するのだから、建築にも妥協があってはいけない。大理石に匹敵するコンクリートを打とうと思った」と話す。
絹のようなきめのコンクリートがイタリアでも打てたのは、92年から安藤さんと仕事を共にする職人集団がイタリアにいるからだ。安藤さんは06年にもピノー財団と組んで同市の新古典主義の邸宅を「パラッツォ・グラッシ」という現代美術館にしている。ベネチア市のカッチャーリ市長は式典で「難しい仕事だと思っていたが、期待以上の修復をしてくれた」とたたえた。プンタ・デラ・ドガーナがあるこの一角は、現代美術の集積地として整備されつつある。数百メートル離れた場所には、イタリアの建築家レンゾ・ピアノさんが倉庫を改修した美術館が同時期に開館。近くには邸宅だったペギー・グッゲンハイム美術館もある。建築物を一から設計できないことにもどかしさを感じないのか。安藤さんに聞くと「建物の周囲にたくさんの木があればそれを大切にするのと同じこと。15世紀の建築という森の中に、新たな建築を作ったんです」と言い切った。建築家の誇りをのぞかせた。
★2013年5月
賛否両論の「カエルと少年の裸像」を撤去、伊ベネチア
イタリア・ベネチア(Venice)のカナル・グランデ(Grand Canal、大運河)入り口に設置され、住民などの間で賛否両論を巻き起こしていたカエルを持った少年の裸像が2013年5月8日、撤去された。芸術愛好家からは批判が噴出している。この高さ約2.4メートルの白い像は、フランスの富豪で美術品収集家のフランソワ・ピノー(Francois Pinault)氏の依頼で、米国人芸術家チャールズ・レイ(Charles Ray)氏が制作したもの。ベネチア市内の現代美術館「プンタ・デラ・ドガーナ(Punta della Dogana)」の外に、対岸のサンマルコ広場(Piazza San Marco)を望むようにして4年前に設置された。
・・・世界で一番アートなカエルですよね。いろいろな考えがあって当然ですが、撤去されるのはちょっと寂しい気もします。