四国民家博物館は2008年に、日本文学研究家エドワード・G・サイデンステッカー(1921-2007)のカエルコレクションの寄贈を受けています。
サイデンステッカーは、谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫など日本近代文学の名作の数々を英訳して世界に紹介しました。特に川端康成のノーベル文学賞受賞に寄与し、川端自身が「ノーベル賞の半分はサイデンステッカー教授のもの」と、その功績をたたえています。ドナルド・キーンとも親交があり、同僚としてコロンビア大学で教壇に立っていた時は、春学期をキーンが、秋学期をサイデンステッカーが授業を担当していました。サイデンステッカーは日本の小さな雨蛙と出会ったときに蛙を好きになり、日本の骨董屋で江戸時代の煙草の根付のカエルを購入したことをきっかけに、カエルの収集を始めます。アメリカと日本を行き来する生活の中で、両方の家の書斎を埋めつくさんばかりにカエルのコレクションが増えていったそうです。サイデンステッカーが集めたカエルのうちの東京の書斎にあった分の500点以上が当館に寄贈されており、展覧会ではそれらの中から、逸品、珍品を選りすぐって展示するとともに、サイデンステッカー氏の業績や文学者との交流を紹介しました。サイデンさんのカエルたちと共に、川端康成や谷崎潤一郎からの書簡、ノーベル賞受賞記念講演「美しい日本の私」英訳原稿、川端や谷崎からサイデンステッカーへ贈られた永井荷風の俳画や書なども展示。(2012年4月28日~7月1日)
このたび、そのコレクションを・・・
●「サイデンステッカー/カエル・コレクション展」
草野心平生誕110周年といわき市立草野心平記念文学館の開館15周年を記念した企画展「サイデンステッカー カエル・コレクション展」が10月5日から、同文学館企画展示室アートパフォーミングスペースで開かれる。12月23日まで。四国民家博物館、カトーレックの協力。エドワード・ジョージ・サイデンステッカー(1921~2007年)は、米国出身の日本文学研究者。「源氏物語」をはじめ、日本文学作品の翻訳を通して日本文化の紹介に尽くしたことで知られ、川端康成のノーベル文学賞受賞にも貢献したといわれている。サイデンステッカーは、根付けや置物といった「カエル」の収集に熱心で、コレクションは500余点に及んでいる。「蛙(かえる)の詩人」として知られる草野心平(1903~1988年)については「詩は立派な蛙のコレクション」と評している。企画展は、コレクションを所蔵する四国民家博物館からの復興支援企画。心平に見せることを約束しながら実現しなかったサイデンステッカーのカエル・コレクションを心平の故郷で紹介する。サイデンステッカーのカエル・コレクション約180点、サイデンステッカーの著書、翻訳書など、220点が展示される。会期中の催しとして、ワークショップ「サイデンさんのカエルの折り紙にちょうせん」は10月12日午前10時から、同文学館アトリウムロビーで開かれる。講師は、日本レクリエーション・インストラクターの高橋政雄さんが務める。参加は無料。記念朗読演奏会「秋の夜の会話 草野心平のカエルの詩」は11月17日午後2時から、同文学館アトリウムロビーで開かれる。同2時半まで、先着5人程度の一般参加者による朗読が行われる。同2時半からは、松本恵美子さんの朗読、青柳仁美(ピアノ)、猪狩佐恵子(クラリネット)さんの演奏が行われる。参加は無料。このほか、ギャラリートークが10月20日、11月24日の午前11時から、同文学館企画展示室で開かれる。観覧券が必要。会期中、市民から寄せられたカエル・グッズを展示する「カエル・グッズ展示コーナー」も設けられる。観覧券が必要。開館時間は午前9時~午後5時(入館は同4時半まで)。会期中の休館日は毎週月曜日(10月14日、11月4日は開館)、10月15日、11月5日となる。
◆【いわき市立草野心平記念文学館】◆
979-3122福島県いわき市小川町高萩字下夕道1番地の39/0246-83-0005
●設計:(株)邑建築事務所
詩人草野心平の世界を建築的に表現することと、環境との調和を考慮し、周辺の豊かな自然に溶け込んだ建築を目指しました。木、土、石といった自然の素材を使い、屋根の大部分を緑化させ、自然の息吹を感じる新しい環境の創出を試みています。小玉ダム建設のための仮設事務所の敷地として乱暴に造成し、失ってしまった美しい自然を再生させることが、草野心平記念文学館の建築にふさわしいと考えました。第18回福島県建築文化賞優秀賞受賞
文化勲章受章者でいわき市の名誉市民でもある詩人・草野心平(1903~1988)の業績を末永く顕彰するとともに、詩を中心とする文学研究成果の公表や情報交換のできる生涯学習施設として、また文学・芸術活動を通しての市民の交流の場を目指します。1998(平成10)年7月19日、心平の故郷である福島県いわき市小川町に開館しました。いわき市小川町の雄大な自然に囲まれた山腹に立地しています。アトリウムロビー正面から一望できる阿武隈山系は、心平が16歳まで暮らした故郷の情景です。館内には常設展示室をはじめ、企画展示室、アートパフォーミングスペース、文学プラザ、小講堂等があり、文学を中心とした様々な事業を展開しています。また、7、8月の土曜日は20時まで開館(入館は19時30分まで)し、サマーナイトコンサート等、多彩な催しを開催しています。
「秋の夜の会話」
さむいね。
ああさむいね。
虫がないてるね。
ああ虫がないてるね。
もうすぐ土の中だね。
土の中はいやだね。
痩せたね。
君もずゐぶん痩せたね。
どこがこんなに切ないんだらうね。
腹だらうかね。
腹とったら死ぬだらうね。
死にたかあないね。
さむいね。
ああ虫がないてるね。